皆さまこんにちは。前回ビタミンCの様々な機能についてご紹介しました。私たちの身体を健康に保ってくれる成分としてなくてはならない栄養素。その中でも特に活性酸素を抑えてくれる働きがあるのですが、本日は「そもそも活性酸素ってなに?」というお話をしたいと思います。
ネットで検索するとたくさんの説明が出てきますのでこちらでは難しい話ではなく簡単にご紹介出来たらと心がけました(それでも私の文章能力が乏しく分かりにくい所があると思いますが…)。これを読んで生活習慣や食習慣の見直しのきっかけに少しでも繋がると嬉しく思います。またはじめからサプリなどに頼る前にまず食事からビタミンCを意識して摂ろうと思って頂けることを期待したいと思います。
目次
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身体は酸化する
まず「酸化」についてご説明したいと思います。酸化とは物質が酸素と結合することです。分かり易くいうと「錆びる」ということ。物質から電子が奪われる変化の総称で、対義語は「還元」です。
身近にあるクギなどの鉄製のモノが長い間放置していたら錆びている、リンゴやジャガ芋を切ったら断面が茶色くなっている、このように酸素と結合する現象を身近に知ることができますね。食物でもっとも酸化が進みやすいのは油脂です。
そしてその状態が身体でも起きているということで、酸素が無くては生きていけないのと同時に酸化は避けられない現象なんです。この酸化現象は呼吸することで取り込んだ酸素の2%がエネルギー代謝の副産物として活性酸素に変化すると考えられているのですが、そのため過剰になった活性酸素を消去する機能が元々備わっているのです。それが以前にもお話した酵素ですが生体の機能って本当によく出来ていますね。しかしこの体内酵素は加齢とともに減少、特に40歳代になると急激に減少してしまうと考えられています。
(生体にあるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)という抗酸化酵素の働きにより過酸化水素となります。過酸化水素については後述します。)
活性酸素自体はなくてはならないもの|異物を排除してくれる
活性酸素とは普通の酸素よりも酸化させる力が非常に強い酸素のことです。こう言ってしまうと悪いイメージしかないかもしれませんが、実はこの活性酸素は高い反応活性を持つため、外部から侵入してきた異物(細菌やウイルスなど)を排除することが出来ます。細胞伝達物質や免疫機能として働くためこの活性酸素自体はなくてはならないものなのです。白血球が免疫機能として働くということはご存知の方も多いかもしれません。簡単に言うとこの白血球が活性酸素を産生して異物を排除してくれるのです。
「ビタミンが足りてないから風邪を引いた」のような表現を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。それがまさしくこの状態を指しています。異物が侵入すると白血球から活性酸素が大量に産生されます。白血球には血中に含まれるビタミンCの80倍も含まれていると言われていて、このビタミンCが免疫を刺激し、白血球の働きを助け、異物を排除する力を高めてくれます。そのため体調を崩した時にはさらにビタミンCの必要量が上がることがわかっています。
つまりこういうことですね。
✓ビタミンCが体内に充分にある時
異物が侵入→白血球が活性酸素を大量に産生→活性酸素が異物を排除(→ビタミンCの補充が必要)
✓ビタミンCが不足していると…
異物が侵入→白血球が活性酸素を産生→白血球の働きが弱く異物を排除しきれない→風邪を引く
ビタミンCが体内にストックされている状態であれば体内に異物が侵入してきても対抗できる力があるということです。しかし体内のビタミンCが不足気味だと異物が侵入した時に戦いきれなくて風邪や感染症にかかり体調を崩してしまうということですね。
そして、さらに外部環境により活性酸素が過剰に増える要因があります。細菌やウイルスの侵入以外にもタバコや紫外線、放射線、X線、パソコンや携帯電話から出る電磁波、大気汚染、ストレス、アルコール、薬剤、農薬や食品添加物、酸化された食品の摂取などによります。
過剰な産生により細胞が傷つき、老化やガンの要因となります。さらに研究途上ではありますが生活習慣病(糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、潰瘍、肺炎、認知症、炎症やアレルギー反応、白内障など)のような様々な疾患をもたらす要因ではないかとも言われています。
活性酸素には種類がある
活性酸素とは大気中に含まれる酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称で、総合的に言うと一酸化窒素、二酸化窒素、オゾン、過酸化脂質を含みます。
そのうち代表的な活性酸素種4種類をご紹介します。そしてこのうちの2種類は原子核の周りにある電子の数が1つの分子(不対電子)の「フリーラジカル」と言って、不安定であるために、安定させるため他の物質から電子を奪う性質があります。その結果、他の物質を酸化させてしまうのです。
※補足ですが、物質を構成する原子は原子核と電子からできています。原子核の周りに複数の電子軌道があり電子が回っています。原子核の周りを回る電子は2つで一対となることで安定化しています。
また残りの2種類はフリーラジカルではないため直接他の物質を酸化させる事はないのですが、結果的にフリーラジカルを生成してしまう働きがあるため、活性酸素の一種とされています。
✓スーパーオキシド(フリーラジカル)
体内に異物が侵入した際、大量に放出され異物を撃退してくれます。他の活性酸素に比べると酸化活性はそれほど高くありませんが他の活性酸素に変化しやすく、毒性の強い悪玉活性酸素になりやすいです。
生体にあるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)という抗酸化酵素の働きにより過酸化水素となります。
✓過酸化水素
SODによってスーパーオキシドが分解されると発生します。電子が対になっているためフリーラジカルではないのですが不安定で酸素を放出しやすく、次に説明する非常に害悪なヒドロキシラジカルを生じることが問題となっています。
水溶液は漂白剤や消毒殺菌剤として用いられていて、医療用の外用消毒剤としてオキシドールが知られています。また歯のホワイトニングやコンタクトレンズの洗浄剤などでも利用されています。
体内では、抗酸化酵素カタラーゼにより安全な酸素と水に分解されます。
✓ヒドロキシラジカル(フリーラジカル)
過酸化水素が酵素でも十分に還元されない場合に生成、また紫外線によっても生じます。ヒドロキシラジカルは酸化力が最も強く凶暴と言われていて、生体内の脂質、タンパク質、核酸などを酸化させ老化やガンの発生、多くの疾病の原因と考えられています。
上記2種と異なりヒドロキシラジカルの消去に有効な抗酸化酵素はなく生体内で作られる抗酸化物質によって消去されますが、体内に影響を及ぼさない化合物と結合することも多いため無害な物質として排出されることも多いと言われています。
✓一重項酸素
紫外線によって皮膚や目に大量に発生します。フリーラジカルではないのですが非常に強い酸化力を持った活性酸素です。
天然成分であるアスタキサンチンが一重項酸素消去活性に非常に優れているとされています。
活性酸素の身体への影響
では活性酸素は具体的にどのように身体に作用してしまうのでしょうか。一部ではありますがこちらも簡単にご紹介します。
過剰な攻撃
活性酸素はとても反応しやすい性質をもっていて他の物質と融合しやすいのです。このような性質のため異物を排除してくれる良い面ばかりでなく、体内の細胞にまで攻撃をしてしまうのです。
✓正常な血管の内壁や内臓などを攻撃したり、細胞核のDNA(遺伝子)を傷つける
✓酵素を失活させる
→老化やガンの原因
✓抗原(花粉や埃、ストレスなどアレルギーの元)が体内に侵入するとヒスタミンなどの化学物質が放出
→炎症やアレルギー反応(花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎など)
✓コラーゲンを壊す
→骨や腱がもろくなる、シワの原因
✓脂質と結びついて過酸化物質となる
→LDLコレステロールが酸化され、血管の老化を促進、動脈硬化をはじめ疾病の要因となる可能性
✓たんぱく質と結びついて変性させる
→酸化された糖とたんぱく質が結合し、異常な糖化たんぱく質が増加、糖尿病の要因となる可能性
→酸化したたんぱく質などの蓄積によりアルツハイマー病やパーキンソン病などの疾病の要因となる可能性
過剰発生により新たな活性酸素をさらに発生
また外部環境により過剰に増えてしまった量を処理しきれず、それが悪さをすることもあります。
✓紫外線や放射線を浴びると活性酸素が発生、連鎖反応で次々と増える
→皮膚を守るためにメラノサイトが活性化されチロシナーゼが酸化を繰り返しメラニンを生成、シミの原因
✓タバコは多量の活性酸素を発生させる
✓タールなどの発ガン性物質と結びつく
✓ビタミンCを壊す
→細胞のガン化を促す
ビタミンCの抗酸化作用
前回のお話で様々な働きをご紹介しましたが、ビタミンCの特徴は中でも特に抗酸化作用の働きです。
どのように働くかというと、簡単に言うと酸化した物質を消去しようと還元する働きをします。そして身代わりとして自らが酸化してしまうという仕組みです。
例えばビタミンCとEは同じ抗酸化物質でも働きかけが異なり、ビタミンCには活性酸素を直接除去する働きがあるのに対し、ビタミンEには酸化の連鎖を抑えてくれるという働きがあります。
またビタミンCは「水溶性」のため体内の水溶性の場所で働き、細胞膜の酸化を”外側”から守るなど、細胞外での抗酸化に働きます。それに対してビタミンEは「脂溶性」のため体内の油脂の部分を活性酸素から守ってくれ、細胞の中に入り込み、細胞膜の酸化を”内側”から守る作用があります。
さらにビタミンEは抗酸化によって自ら酸化すると壊れてしまいますが、ビタミンCが働いて弱ったビタミンEを復活させてくれる作用(酸化型のビタミンEラジカルを還元力のあるビタミンEへと再生)があるので一緒に摂取した方が効率的と言われています。
抗酸化物質はよく耳にする代表的なものをはじめ数多くあります。その中でも上記で紹介した活性酸素4種類全てに働きかけられるのがビタミンCです。それ以外の抗酸化物質は1種類(またはあっても2~3種類)の活性酸素にしか働きかけが出来ません。それだけビタミンCは抗酸化力にとても優れていると言えます。
補足になりますが、抗酸化作用を持つ成分はビタミンC以外では、カロテン、ビタミンE、リコピン、ポリフェノール、カテキン、アスタキサンチンなど数多くあります。それは地球の歴史上、海洋生物から陸へと順応するに当たり進化し、中でも植物は進化の過程において自然淘汰の網をくぐり抜け、海洋生物には見られない抗酸化作用が産生されるようになりました。
そういった歴史上の進化を考えても、これらの成分が同じような働きをするのではなく成分によって少しずつ異なっているのです。「どこで」「どのように」働くのかがそれぞれ異なるため、ビタミンCだけ摂取出来れば良いということではないとを頭の片隅にでも覚えていてくれると嬉しく思います。
例えば以前記事にした味噌についてですが、味噌には優れた抗酸化能力を持っていて、味噌のラジカル捕捉能力はその大半をメラノイジンが担っており、味噌の色が濃いほどその能力が高まっているとされています。
また善玉菌と呼ばれる腸内細菌も、自らを犠牲にして活性酸素を消去してくれます。冒頭で「白血球が活性酸素を産生して異物を排除してくれる」とお話しましたがこの産生された活性酸素を乳酸菌が後始末してくれているのです。
病院での減塩対応|日本の食卓からもいつか味噌汁が消えてしまう? – ピューレの森 (puree-nomori.com)
活性酸素のまとめ
✓酸化現象は呼吸することで取り込んだ酸素のエネルギー代謝の副産物として、活性酸素に変化する
✓活性酸素自体はなくてはならないもの。異物を排除してくれる
✓外部環境により活性酸素が過剰に増える要因がある
✓代表的な活性酸素は4種類あり、そのうち2種類はフリーラジカルである
✓活性酸素は正常な細胞を過剰に攻撃する。また過剰発生が新たな活性酸素を生み出す
✓抗酸化物質が体内に充分にある時は体内に異物が侵入しても体調を崩しにくい
✓ビタミンCには活性酸素を直接除去する働きがある
✓ビタミンCの作用は代表的な活性酸素種4種すべてに作用する
✓抗酸化物質はビタミンC以外にも多くの種類があるが、作用はそれぞれ異なりまた限られる
✓同じ抗酸化作用のあるビタミンEが活躍し作用が弱ったあとは、ビタミンCがEを再生してくれる
さいごに|なるべく新鮮で色んな種類の食材を摂りたい
ビタミンCは食事からの摂取量が昔に比べて減少傾向にある一方で、消費量はストレスや紫外線、電磁波などにより要因が増えています。ビタミンCの消費量が増えてしまう要因に心当たりがある方は、生活習慣の見直し(タバコ、アルコール、運動、ストレスためない、紫外線を避ける)、食生活の見直し(偏りがないか振り返り、普段食べない食材を選ぶなど)のきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
その一方で現代ではサプリメントなどでの過剰摂取も問題となっていて過剰による人体への影響も懸念されています。ビタミンは水溶性のため多く摂取しても過剰になることはないと言われてきましたが、正確には一定量まで体内に蓄えられ、それを超えると飽和し、その分が尿とともに排泄されるということです。極端な過剰により活性酸素を産生するという逆の働きをしてしまい、細胞死を引き起こすとも報告されています。まだ研究途上ではありますが何事もやりすぎはかえって身体に毒になるんですね。安易に健康のためと思って限られた成分だけを摂取するというのは私はあまりお勧めできないと思っております。
抗酸化物質は酸化防止剤として食品以外にも日用品や工業用品など多くの場面で利用されています。活性酸素は多くの疾病の原因の一つとして注目されていますが、現状では活性酸素が病気の原因であるのかそれとも結果であるのかも不明と言われていて、抗酸化物質は医薬分野では現在でも研究が続けられています。もしも健康に良いとされる成分だけを体内に補充することで健康で長生きできるというのなら医療の発展とともに疾病患者が減るのではないでしょうか。そうではないということは、ただ単に健康効果が期待される成分だけを補充すれば良いということではなく、なるべく添加物のない新鮮な食材で、ひとつでも多くの食材を選び、複雑に絡み合った様々な栄養素の相乗効果に期待したいと思っています。
最後になりますが、脳と腸が繋がっているように当然ですが心も身体も繋がってます。何より食事を楽しみながら摂取することで栄養となり未来の身体に投資できているのではないかと、勉強すればするほど感じています。野菜や果物を日々の食事からしっかり摂るというのは生活環境により続かない場合もあると思いますが(何より私がそうだったので)、理屈抜きにしてとにかく毎日意識して頂けると嬉しく思います。
本日も最後までお付き合い頂きまして、有難う御座いました。