ビタミンCの話|私たちに不可欠な栄養素

ビタミンCの話|私たちに不可欠な栄養素

皆さまこんにちは。本日はビタミンCのお話になります。ある物質の合成や代謝に関与しているとても重要な成分なのですが、ビタミンCはビタミンB群と異なり補酵素としての関与ではありません。ちょっと言い回しが分かりにくいですが、要はビタミンCは生化学的には補酵素ではないのですがそれに近い働きをしており、ヒトにはなくてはならない成分なのです。以前の記事で酵素や補酵素についてお話しましたが、現在、酵素が身体によい、健康に良いと注目されています。しかし酵素は献立作成をする際の必須項目ではないとお話しました。栄養士養成学校では授業で勉強しますが日本人の食事摂取基準に掲載が無いものは献立作成時に考慮する必要がありません。従って生野菜や生果物、発酵食品を積極的に摂り入れるということはなく(糖尿病などでは生果物を摂り入れるなど疾患に合わせた素材や調理法の選択はありますが、酵素という観点で提供することはありません)、また生野菜や生果物は殺菌して食中毒の原因菌をなくしてから提供しますので酵素も善玉菌とされる微生物も一緒に死滅してしまいます。

そしてビタミンは必須栄養素とされています。酵素について正しい知識を得て積極的に摂り入れることはとても良いことと私は思いますが、基本はあくまでもまず食事摂取基準に掲載された必須栄養素をしっかりと摂り入れられていることが大前提です。その上で酵素のことも意識できたらますます身体に良い効果をもたらしてくれることが期待できるのではないでしょうか。
酵素ばかりを意識してサプリなどで補っても、日頃の食事にビタミンやミネラルなど基本的な食事が摂れていなければせっかくの酵素の効果は最大限に発揮できないと私は思います。何事も基本あってこそ。それを知って頂きたく、本日はビタミンCのお話をしたいと思っております。

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目次

ヒトは体内で合成できない|だから「必須」栄養素

ビタミンCって、言葉自体は知らない人はいないくらい、ビタミンの代表のようなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。それだけ広く認知されていると思いますがではそのビタミンCは身体にどのような効果をもたらしてくれるのかということを正しく説明出来る人は案外少ないのかもしれません。またどんな食材に含まれていて何をどれだけ食べれば一日の推奨量が満たされるのか、ということまでは具体的に分からない方もいらっしゃるのではないかと思います。イメージ先行ばかりで意外と誤解されているかもしれない、そんなことを正しくお伝えできたらと思います。

ほとんどの動物はビタミンCを体内で合成することができます。そのため動物にとってはビタミンではありません。体内で合成できないのはヒトやサルなどの霊長類と、モルモット、ゾウなど一部だけです。
ビタミンCに限らずヒトの体内で合成できる栄養素もあればできない栄養素もあります。生きていくためになくてはならない、しかしそれを体内で合成できない(または合成できても必要量に満たない極少量)、それを外部から摂り入れなければならない栄養素を「必須栄養素」と呼びます。

ビタミンCの機能

ビタミンCは、壊血病(スコルビック)に対抗(アンチ)する物質で、柑橘類に含まれている酸として発見され、化学名として「アスコルビン酸」と命名されました。

ビタミンCの機能は「日本人の食事摂取基準」にはこのように掲載されています。

1─2 機能
ビタミンC は、皮膚や細胞のコラーゲンの合成に必須である。ビタミン Cが欠乏すると、コラーゲン合成ができないので血管がもろくなり出血傾向となり、壊血病となる。壊血病の症状は、疲労倦怠、いらいらする、顔色が悪い、皮下や歯茎からの出血、貧血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難などである。また、ビタミン C は、抗酸化作用があり、生体内でビタミン E と協力して活性酸素を消去して細胞を保護している。

厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020 00_5_名簿_cs6_0110追加.indd (mhlw.go.jp)

作用的に分けると以下のようになります

✓強力な抗酸化作用
 皮膚の黒いしみの原因であるメラニンの合成酵素を強く阻害する。美容への応用などに活用
✓コラーゲン合成に必要な酵素に関与
 皮膚や骨の健康のために不可欠
✓免疫力を高める
 感染症、がんの予防、治療、免疫増強作用
✓抗ストレス作用
 アドレナリンなどの神経伝達物質であるカテコールアミンの合成に重要な酵素を助ける補因子としての働き
✓アミノ酸を代謝して神経伝達物質を作る
 ・チロシン(必須アミノ酸フェニルアラニンから作られるアミノ酸)からノルアドレナリンを産生する
 ・必須アミノ酸の一種トリプトファンからセロトニンという神経伝達物質を合成するときに関与する
✓酵素の働きを助ける
 アミノ酸の代謝のほかコレステロールなどの脂質代謝、肝臓の解毒作用のための酵素などに関与
✓鉄の吸収を良くする
 腸管の中で吸収されにくい3価の鉄イオンを2価に還元させて鉄の吸収を促進する。貧血の予防、治療
✓医療分野への期待
 糖尿病発症、合併症の予防、高血圧予防、動脈硬化症の予防などへの期待

機能の補足

✓強力な抗酸化作用
ビタミンCは身体の細胞が酸化したサビ取り(抗酸化)に働きます。この抗酸化作用はビタミンCから電子(水素)が離れやすいために起こります。この離れた電子(水素)がほかの物質を還元します。メラニンの合成酵素を強く阻害する以外にも、ガンや血圧の低下、動脈硬化症の予防など、心臓疾患につながるような症状を防ぐ働きなどがあります。
尚、脂溶性のビタミンEにも抗酸化作用があり、併用することで効率的に発揮することができます。

✓コラーゲン合成に必要な酵素に関与
ビタミンCはコラーゲンを合成する際に欠かせません。コラーゲンは簡単に言うとタンパク質の一種で、体内のタンパク質のうち3割はコラーゲンです。細胞や組織を結びつける働きをし、筋肉や腱、骨、内臓、血管、皮膚、爪、髪の毛など多くの場所に存在します。ビタミンCが不足するとコラーゲン合成が出来ず、毛細血管が脆くなるなど壊血病の症状が出ます。

✓免疫力を高める
ビタミンCは免疫機能である白血球の働きを助け、細菌やウイルスを抑える力を高めてくれるため風邪やガンなどに効力があります。白血球には、血中濃度のおよそ80倍のビタミンCが含まれていると言われており、病気にかかったときやストレス時にはさらにビタミンCの必要量が上がることがわかっています。

✓抗ストレス作用
体内では1500㎎までビタミンCを貯蔵できると言われていて、体内貯蔵量が300㎎以下になると壊血病の兆候が現れます。多く含むのは眼、副腎、脳で、その中でも最も多くビタミンCが存在するのが副腎と言われています(血中濃度のおよそ150倍)。
ストレスから身を守ろうとして分泌されるホルモンに「コルチゾール」や「ノルアドレナリン」などがありますが、ビタミンCは副腎がコルチゾールなどのホルモンを産生するときの材料となるため、副腎は特にビタミンCを必要としている臓器なのです。

✓アミノ酸を代謝して神経伝達物質を作る
チロシン(必須アミノ酸フェニルアラニンから作られるアミノ酸)からノルアドレナリンを産生するためにもビタミンCが使われます。
またトリプトファン(必須アミノ酸の一種)からセロトニン(ドーパミン・ノルアドレナリンを制御し精神を安定させる働きをする)という神経伝達物質を合成するときにも、ビタミンCが使われます。

✓酵素の働きを助ける
アミノ酸の代謝のほかコレステロールなどの脂質代謝、肝臓の解毒作用のための酵素、カルニチン(アミノ酸)の合成促進、胆汁酸合成の促進、抗ヒスタミン作用などに関与しています。

✓鉄の吸収を良くする
摂取した鉄はそのままだと吸収されにくい(3価)のですが還元作用のあるビタミンCと一緒に摂ることで2価となり吸収率がアップします。

✓医療分野への期待
糖尿病の高血糖はとても酸化ストレスの強い状態です。現在も研究途上ですが糖尿病患者が還元型ビタミンCの摂取量を増やすことにより恩恵を受けることができるという研究結果も出ていました。
またフリーラジカルは合併症の原因になるため、ビタミンCを補給することで血圧を下げたり動脈硬化を減らすことにより合併症や心臓病のリスク因子の進行を遅らせたりすることに期待できます。
さらに、ビタミンCはブドウ糖(グルコース)と化学構造が似ているため、ビタミンCが細胞に入る時ブドウ糖と競合することが研究で明らかになっています。ビタミンCには腸管におけるブドウ糖吸収を抑制すると言われていて、インスリンとよく似た血糖値コントロール作用があると言われています。

消化吸収、代謝の仕組み

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ビタミンCはどのように消化吸収されるのでしょうか。食事摂取基準にはこのように掲載されています。

1─3 消化、吸収、代謝
ビタミン C は、消化管から吸収されて速やかに血中に送られる。消化過程は食品ごとに異なり、一緒に食べる他の食品によっても影響を受ける。ビタミン Cはビタミンとしては例外で、食事から摂取したものも、いわゆるサプリメントから摂取したものも、その相対生体利用率に差異はなく2)、吸収率は 200 mg/日程度までは 90% と高く、1 g/日以上になると 50% 以下となる 131)。酸化型のデヒドロアスコルビン酸も、生体内で還元酵素により速やかにアスコルビン酸に変換されるため生物学的な効力を持つ 132)。体内のビタミン Cレベルは、消化管からの吸収率、体内における再利用、腎臓からの未変化体の排泄により調節されており、血漿濃度は、およそ 400 mg/日で飽和する 131,133)。

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ビタミンCは胃などで消化されることなくそのまま主に小腸上部で吸収され門脈を通り肝臓に送られます。そして血液に乗って全身に運ばれ、貯められて必要なときに使われます。食事摂取基準の説明にもあるように一定の摂取量を超えると飽和します。ビタミンCは「水溶性」のため、飽和した分は尿として排出されてしまいます。しかしただ飽和するということではなく、この吸収しきれなかった分は大腸で乳酸菌などの善玉菌を増やしてくれたり便をやわらかくしてくれます。ただし極端に大量のビタミンCを摂りすぎると吐き気や下痢、腹痛などの症状が出ますのでご注意ください。
ビタミンCは約3時間後に濃度がピークになりその後は緩やかに減少していくと言われていますが、消化過程は食品ごとに異なり一緒に食べる他の食品によっても影響を受けます。例えばジュースで摂取すると排出までのスピードは速くなり、食物繊維と一緒に摂ると長く留まりやすいと言われています。こういったことも知ると効率よく体内で利用できそうですね。またビタミンEはビタミンCを一緒に摂ることで抗酸化作用の相乗効果が得られますので組み合わせも意識してみてください。

一日の摂取量の目安

12歳以上の男女ともに必要量は85mg、推奨量は100mgとの指標です。

日本人の食事摂取基準2020 ビタミンC

まとめ|ビタミンCにはいくつかのポイントがある

上記のお話をざっくりとまとめると以下のようになります。

✓酵素でも補酵素でもないが、ヒトの様々な機能に欠かせない補因子である
✓ヒトやサルをはじめ霊長類や一部の動物では体内で合成できない
✓一日に100mg摂取することが推奨されている
✓欠乏すると壊血病になる、また不足すると風邪や感染症にかかりやすくなったり肌トラブルに繋がる
✓推奨量より多く摂取しても問題はないが飽和すると尿とともに排出されてしまう
✓極端に大量に摂り過ぎると吐き気や下痢、腹痛などの症状が現れる
✓消化過程は食品ごとに異なりジュースで摂取する場合や食物繊維などと一緒に摂る場合などで排出までに差が出る
✓ビタミンEと一緒に摂ることで抗酸化作用の相乗効果が得られる
✓研究途上ではあるが各種疾病にも効果が期待されている

いかがでしたでしょうか。イメージ先行で美肌に良いという、何となく女性に嬉しいビタミンCというイメージが強くありますがそうではないということが少しでも伝わると嬉しく思います。以前コラーゲンの記事にも同じようなことを記載しましたが、老若男女問わず欠かせない栄養素ということがわかります。もし、そういえば最近果物を食べてないな…生野菜食べてないな…という方は、ぜひ意識して毎日の食事に摂り入れてみてください。栄養素はチームプレーで活きるということをここでもお伝えできたらと思います。

明るい元気になれるような色を「ビタミンカラー」と言うこともありますが、ビタミンCはまさに心身ともに元気になれる必須栄養素です。私は毎日生果物を食べるように心がけ、昔ながらの製法の漬物を食べるようにしています。現代の大量生産の漬物は野菜を一度殺菌していますが昔ながらの発酵させて作る保存のための本来の作り方は生野菜のまま微生物を活かして発酵させ食中毒菌を減らし善玉菌を増やしています。またその善玉菌である乳酸菌などがビタミンB群やCを生成していますので手軽に毎日補充出来ています。
以前働き過ぎていた頃は食事の摂り方も不規則でその内容もコンビニや外食ばかりでした。今はコンビニでもバナナやみかんなど購入できる店舗もありますし今思えば時間が取れないなりにももう少し工夫できていたのでは…と思います。はじめからサプリなどに頼る前に、これなら手軽に買える、食べられそう、という食材や商品を見つけて頂けると嬉しく思います。

次回もビタミンCに関わるお話を予定しております。最後までお付き合い下さいまして、ありがとうございました。