ビタミンCの話|過酷な環境下で生き残るために植物は養分を蓄える

ビタミンCの話|過酷な環境下で生き残るために植物は養分を蓄える

皆様こんにちは。これまでビタミンCについて話をしてきました。その中で抗酸化作用について触れましたがなぜ野菜や果物などの植物にビタミンCが豊富に含まれているかというお話をしています。光合成によって植物は育ちますが紫外線を浴びているのに何で植物は日焼けしないんだろうと考えたことはないでしょうか。なぜかというと酸化を防ぐ成分を自ら作り、自分の身体を自分で守っているからなのです。夏でも冬でも過酷な環境下で耐え生き残った植物は栄養たっぷりと言われていますが、本日はその理由を簡単にご紹介したいと思います。

目次

光合成の仕組み

Photosynthesis  - MAKY_OREL / Pixabay
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光合成は簡単に言うと、光エネルギーを利用して水と二酸化炭素から養分と酸素を生み出します。養分というのは主に糖分(でんぷん、すなわちブドウ糖)のことを指します。このでんぷんを生成した際に作られた酸素は不要のため排出されるという仕組みです。ビタミンCが一般的に根菜類よりも葉茎菜類に多く含まれるのは光合成のためということが分かりますね。

光合成によって生成された養分をもとにビタミンCを生成し、自身を守っている

Bitter Gourd Bitter Melon  - Vishnu-Vasu / Pixabay
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光合成の際、副産物である酸素が還元されるのですが活性酸素種もたくさん発生します。この酸化が植物にとっても悪さをしてしまうため、このブドウ糖をもとに抗酸化物質としてビタミンCを合成し、蓄積するという能力が備わりました。さらに植物はこのビタミンCを使ってある活性酸素種(過酸化水素)を特異的に還元して無毒化する独自のシステムを備えました(「アスコルビン酸ペルオキシダーゼ」という酵素)。このように植物にはその分多くの酵素が存在しており、活性酸素とのバランスを保っているのです。
このビタミンCが強力な抗酸化力を持っていて自分たちの身を守っているのです。改めて、自然の仕組みは尊いと思い知らされます。

葉っぱが日焼けしない理由はビタミンC以外にも様々な酸化を防ぐ働きをする成分を持っていて、自分たちの身を守っているのですね。特に日差しの強い夏に採れる野菜は色の濃い野菜のイメージが強いですが、トマト、ナス、ピーマン、ゴーヤ、トウモロコシなど、これらは夏の強い紫外線から酸化を防ぐために身を守るため色素が濃くなっているのです。カロテノイドやポリフェノール、アントシアニンなどの抗酸化物質により活性酸素種を消去する能力が高いのです。

しかし夏野菜だけではありません。たとえばほうれん草の旬は冬ですが、通年や夏に採れる時の栄養価よりも冬に採れる方がビタミンC含有量が高いと言われています。理由は生育時の気温が関係し、低温で育つことで生き残るために葉に糖分などを蓄え肉厚になり、ビタミンCが増加することが理由として考えられています。

夏の暑さにも冬の寒さにも耐え抜いた野菜はそれだけ養分を蓄えているために栄養価が高くなっているということですね。旬の食材には栄養が豊富と言われていますが、甘味や美味しさが増しているため旬のものはその時に頂きたいものです。

ビタミンC以外にも、たくさんの抗酸化物質が植物を守っている

今お話したようにビタミンCだけでなくビタミンEやカロテノイドほか、様々な成分で身を守っているということがわかります。ビタミンCは酸素だけでなく熱や光、金属などにも触れると壊れやすく、さらに水に溶けやすい性質があります。植物も、人間と同じようにビタミンC以外の性質の抗酸化物質を持ち合わせることで自身を守っているのです。
その他の抗酸化物質につきましては別の記事でご紹介したいと思います。

さいごに|完全栄養食ばかり食べたら何千万年後の人類は元に戻ってしまう?

Evolution Human Ape Development  - KELLEPICS / Pixabay
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前回の記事でもお話しましたが人間はビタミンCを合成することができません。他のほとんどの動物は合成できるのですが、人間をはじめ一部の動物は合成に必要な4つの酵素のうち、最後の酵素(GLO:グロノ-γ-ラクトン酸化酵素)だけが欠落してしまったのです。人間も必要なものなら体内で合成できれば楽なのに、何でこんな不便な生き方をしなくてはいけないのだろうと思いますよね。歴史上の進化の中でわざと欠落させるいくつかの考えられる理由に触れたのですが、自分たちで確保できる能力があったヒトはその備わっていた機能よりも優先順位である脳の方にブドウ糖が行き届きやすいように変異したのではと考えられています。

一度美味しいものを求めて自ら確保するような能力を得てしまったらずっとそうし続けなくてはいけない機能になってしまった。何千万年という歴史の進化の中で、人間に足りない栄養素を自ら補わなくては生きていけないことを私たちはこれからも続けなくてはいけません。私たちが自ら確保し補充し続けるDNAを未来の人類にも引き継がなくてはいけないですね。

ここでふと思うのは、もともとヒトの祖先はビタミンCを合成できていたのでこのまま多くの人類がビタミンCを補給せずにいたらいつかまた変異して合成できる機能が戻ってしまうのではないでしょうか…あるいは別の生き延びる方法として変異するなど、あり得ないこととは思いますがそんなくだらなくも怖いことを考えてしまいます。その時は何千万年という時をかけての話になるのでしょうがそうなった場合、脳へのブドウ糖供給が減り、脳も退化してしまうのかもしれません。その途中で壊血病やその他の病気による犠牲者が多く出て、医療では解決せず、その中で繰り返されていったら体内で合成できる機能が戻ったり別の機能として変異したり、何となくネガティブな妄想に駆り立てられます。もし自然の恵みを頂くことをやめ、人間が作り上げた完全栄養食という加工品を食べ続けたら歴史は繰り返されるのでしょうか。何千万年後の人類がそうならないためにも今私たちは自然の恵みを毎日補給し続けることが必要ではとありもしないことを考えてしまいました。使命とも言えるべき必須栄養素の補給。未来の人類へのDNA継承のためにも…とは大げさな話かもしれませんがまずは自分の身体を労わって必須栄養素と言われるビタミンを毎日補給したいと思います。
本日も最後までお付き合い下さいまして、有難う御座いました。