今さらだけど「正しく恐れる」ってどういうこと?|前編:手洗いのコツ

今さらだけど「正しく恐れる」ってどういうこと?|前編:手洗いのコツ

皆さまこんにちは。パンデミック宣言以来「正しく恐れる」と言われてきましたが、具体的にどういうことだろうと思ったことはないでしょうか。
今回は私が心がけていることを簡単にご紹介したいと思います。
前回の記事と重複するものもありますがこちらでは手洗いに関連することを中心にまとめております。
これから冬に向けて感染症が心配な季節に入りますので、これなら出来そう!というものをご紹介したいと思います。

目次

聞いたことがあるかもしれない?まずは覚えやすい標語3種類

労働安全衛生管理には4Sというものがあります。労働環境という幅広い場面において標語として使われていますのでご存知の方も多いのではないでしょうか。
まずは何と言っても大前提にこの状態をご家庭でも心がけることが大切です。4Sにひとつ加えて5Sで普及していますが、自治体によっては独自に加えて7原則としているところなどもあります。
✓整理
✓整頓
✓清掃
✓清潔
✓しつけ(習慣)

(引用元:厚生労働省ホームページ) 
職場のあんぜんサイト:4S(整理、整頓、清掃、清潔)[安全衛生キーワード] (mhlw.go.jp)

続いてこちらは”微生物菌による食中毒予防”の3原則です。
✓つけない
✓増やさない
✓やっつける

そしてノロウイルス流行以降、”ウイルス感染による食中毒予防”のための4原則も新たに出来ました。
✓持ち込まない
✓拡げない
✓つけない
✓やっつける

従来からある食中毒予防の3原則は微生物菌による食中毒のことを指していて、微生物菌は食材の中で自ら増殖できるため”増やさない”ように心がけます。
一方、ウイルスは自ら増殖することは出来ません。ヒトや動物の中でコピーを増やす特徴のためそれに合わせて表現を変えています。そのため”持ち込まない””拡げない”というイメージを持つことを心がけます。自分がウイルスをもらい、そして拡げることのないよう努めましょうということですね。
微生物菌とウイルスは全く異なるもののため分けて表現していますが、どちらも汚染を拡大させないためにという意味では共通しています。感染防止対策として意識する上でとても分かりやすい標語です。

(引用元:厚生労働省ホームページ→政府広報オンライン) 
食中毒予防の原則と6つのポイント | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)

基本は手洗い

Hand Washing Soap Wash Hygiene  - slavoljubovski / Pixabay
slavoljubovski / Pixabay

前回の記事で、公衆衛生の基本は手洗いとお伝えしました。
菌やウイルスは目に見えず、私たちの手の触れる近くに付着しています。
ノロウイルスの場合は腸内で増殖するため、トイレ使用後には便を介して個室内やご自身の手指、衣服に付着しています。また嘔吐した時は吐物にもノロウイルスが含まれています。
インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスは呼吸器内で増殖するため、咳やくしゃみ、鼻をかんだ後の手指や顔に付着しています。


ほかにもウイルスはたくさんありますがこの3種だけでお伝えしますと、身の回りの無機質なモノに数時間から数日間残存していると言われています。
そのため無意識にウイルスをご自身の手指にも付着させてしまっている可能性があるため、手洗いは基本であるとされています。

(引用元:厚生労働省ホームページ 手洗いポスター) 手洗い (mhlw.go.jp) 
(引用元:厚生労働省ホームページ 接触感染注意喚起) PowerPoint プレゼンテーション (mhlw.go.jp)

手洗いのポスターをあちこちで目にするかと思いますが推奨通りの手順で洗うと、手を拭くところまでで約1分半かかります。何となく面倒臭くなってしまい、冬は水が冷たくてついつい省略しがちになります。
でも、手洗いを怠ると感染するリスクは高くなりますので、是非これを機に ”短かくてもいいからまずは手を洗う” と心がけて頂けると嬉しいです。

一日に手を洗う回数を数えてみると

上記の”正しい手洗い”をいつもできれば安心です。でもそれが意外と難しい…
技術的に難しいのでなく、毎回手を洗うことを継続することが難しいと私は個人的に思います。
人は平均して一日に8回程度トイレに行くと言われています。
この8回に加えて外出後、帰宅後、調理前、調理後、3回の食事前、おやつを食べる前、咳やくしゃみ・鼻をかんだ後、喫煙後、ゴミ捨てや外の共有物に触れた後、赤ちゃんのお世話や介護の後、などの状況が考えられますが、手をこまめに洗いましょうと言われても相当な回数になると思います。お世話をすることの無い私でも一日に20回程度は手を洗うことになります。


前職では手を洗ったら正の字を書くという社内独自ルールがありました。それだけ意識付けが必要ということと、それだけ実際に手を洗うタイミングがあるということです。
”基本的な対策を”とサラっと言われてもついつい面倒だなぁ思う本音もありますよね…
しかし何よりも、面倒ということだけでなく手荒れの心配にもつながります。手洗いの徹底と手荒れという矛盾した問題をどう解決していけば良いのか、そのヒントになることが一つでも見つかると嬉しく思います。

短くてもいいからまずは手洗いを

面倒であったり手荒れを心配したり。でもだからと言ってこの20回を省略するわけにはいきません。パンデミックが収まっても一生続けなければいけない基本的な習慣なのです。毎年インフルエンザやノロウイルス、その他の数多くのウイルスと闘わなくてはいけませんし、考えたくないですが今後新たなウイルスも出現するかもしれません。

そこでお勧めしたいのが”短かくてもいいからまずは手を洗う”です。
最終的な狙いは自分自身に”習慣化”させることですが、これは私が自分で納得して実践できている手段です。
前回の記事にも同じものを記載しましたが、厚生労働省のホームページにとても分かりやすい資料があります。私はこの方法で毎回手を洗っています(場面によってはもっと入念に洗いますが)。

(引用元:厚生労働省ホームページ 手洗い資料PDF)
Microsoft PowerPoint – ノロウイルスによる食中毒の現状と対策について.pptx (mhlw.go.jp)

こちらの資料を1ページ目だけ転記いたしました。

4行目の「ハンドソープで60秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ」と、
一番下の「 ハンドソープで10秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ を2回繰り返す」のウイルス残存数を比較頂きたいと思います。

残存数が60秒洗い、15秒すすぎを1回ではウイルス残存数が「数十個」に対し、
10秒洗い、15秒すすぎを2回繰り返す方はウイルス残存数が「数個」なのです。
食器を洗ったり洗濯物をする時なども、1回より2回の方が効率よくすすげるのと同じ要領です。
生野菜を洗う時も、流水でなく溜めすすぎを3回行う方が泥や砂がより落ちると言われています。

60秒よりも10秒2回の方がウイルスが落ちるって、とても効率的ではないでしょうか。
トータルで25秒短縮できることになります。
これをイラストにしたポスターが、一つ上の”接触喚起注意ポスター”にも実は出ています。


前職でも出社時とトイレ使用後は2回繰り返すルールになっていましたが、本職ではさすがに10秒とはいきません。でも2回繰り返すことの効果はあると信じています。
(※特に指先やしわとしわの間を洗うことはしっかりと意識しましょう)

ポイントは、泡立てて汚れを浮かせた泡をしっかりと”すすぐ”ことなのです。

意外とやりがち?効果を下げてしまう行動5つ

Question Mark Think Question  - Peggy_Marco / Pixabay
Peggy_Marco / Pixabay

せっかく毎回きちんと手を洗ったつもりでいても効果が弱くなってしまったら悲しいですよね。こちらでは5つにまとめましたので、ご自身でも思い当たることがないか一緒に振り返ってみましょう。


1.渇いた手にいきなり石鹸をつける
手洗いをする時はじめに一度手を濡らすように流水で流すと思いますが、意外と手を濡らさず渇いた手にいきなり石鹸をつける方がいます。
上記の”手洗いの時間、回数による効果”にもありますように、流水すすぎのみでもウイルスは1%までに減らせると言われています。1%までに減らしてから石鹸を使用した方がよりウイルスを落とす効果が上がるため、心当たりのある方は見直すきっかけにして頂けたらと思います。

2.力強く洗う
一生懸命洗おうと力強くゴシゴシ洗っている方はいないでしょうか。手を傷つけたり手が荒れてしまうとそこから菌が増殖してしまいますので、やさしく泡を包み込むように洗うと良いかと思います。傷口には絆創膏などで保護をして患部は避けましょう。基本的には泡でしわとしわの間に入り込んでいる菌やウイルスを浮かせるイメージです。昔のCMで「洗顔は泡が命」というフレーズを覚えている方もいますでしょうか。手洗いも洗顔も同じなのです。

3.ちゃんと手を拭かず水分が残っている
何となく水滴が残っていることはないでしょうか。水分が残っていると手荒れに繋がりますのでしっかりと水分を拭きとりましょう。

4.手を拭いたペーパータオルで周囲を拭く
ペーパータオルを使用して手を拭く場合、その手を拭いたペーパータオルで洗面所周辺に跳ねた水を拭く方がいます。良かれと思ってのことかと思うのですがそのペーパータオルには残ったウイルスが付着している可能性があるため、すぐに捨てることをおすすめします。

5.お湯で手を洗う
寒い季節に熱いお湯で手を洗うのもあまりお勧めできません。手荒れに繋がるためぬるめの温度にすると良いでしょう。また乾燥する季節はしっかりとハンドクリームなどでハンドケアを忘れずに。
手荒れが原因で菌が増殖してしまっては逆効果です。ハンドケアが感染拡大を防ぐことに繋がります。

まとめ

私なりの解釈で実践していることをお伝えしてきたことを、以下にまとめました。

✓大前提に、整理整頓された衛生的な環境づくりを心がける
✓ウイルスをもらわない、拡げないためには手洗いが基本
✓寒い季節でも熱いお湯では洗わない、ぬるま湯に調整して手荒れを防ぐ
✓短くても効率の良い手洗いの方法、60秒1回よりも10秒2回
✓すすぎを意識する
✓手洗い後はしっかりと水分を拭きとる
✓ハンドケアを忘れずに

手を洗うことの重要性に対して習慣化の問題や手荒れの問題は矛盾していてとても悩ましい現実です。
医療関係者や飲食店、美容師さんなど日常的に水仕事をしている方には死活問題ですが、他のお仕事やご家庭でもご苦労されている方も少なくないと思います。

私も前職の時は業務用洗剤が私には強く、常に手荒れしていた状態でした。
軽いカサカサ程度なら普通に手洗いとアルコール消毒をしますし、調理器具などの洗い物を常にしている状態でしたので現場にいるうちは良くなることはありませんでした。
併せて事務作業があると書類を大量に扱うため特に指先の乾燥がひどく辛かったです。あまりにも酷い時は常時手袋をして厨房作業に当たっていましたが、乾燥させる機会が少ないと治りも遅くなります。

手洗いを習慣化させつつ手荒れ防止にも努める、ポイントを知った上で”正しく恐れる”ことを何か一つでも参考にできるものがあったら嬉しく思います。


今回は前編として手洗いについてまとめましたが、次回はアルコール消毒のことなど手洗い以外のことに触れたいと思います。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。