皆さまこんにちは。佐々木漬物のこだわりのぬか漬けの原点について、以前の記事でもご紹介致しました。
御主人の生まれ育った地域では当時石炭産業が発展し、昭和22年に炭坑用開発事業が起工され全耕地の3分の1が買収されました。零細農に陥っている中で農家経済は極めて苦しいのが実態でありました。
そんな中、「青年活動」の一環である「4Hクラブ」という青少年の研究グループが有り、農業改革・生活改善をする中で日本の伝統食であるぬか漬けに興味を持ち、現在に至ったと言います。
発表内容は【養鶏を主体とした私の経営改善】という表題で、この時に支出改善の一環で飼料の見直も行っており、また、発表飼料には米ぬかのことは書かれておりませんが養鶏場の土に米ぬかを撒いて発酵させ、良質な土にしていたとのことです。
目次
目次
【養鶏を主体とした私の経営改善】の概要
(動機)
〇主要作物の生産面においては不合理な点がみられ、生産費が髙い割に収入が少なく畜産(養鶏)においては、労仂力の平均化現金収入、地力培養等において合理化され、経営全般において収入の増加がはかれる。
〇立地条件や経営条件から検討した結果、養鶏を選定し取り組む。
〇まず昭和33年度より初生ビナ雄を購入し育雛の研究に重点を置き、その后技術の研究と圣験を積むにしたがって随時羽数を増加。
(課題)
〇現在の育雛器は箱型を使用し100羽の育雛が限界。
〇育成飼料の問題、自給飼料を重点とするか、購入飼料を重点にするかについて考慮。
育成期間中は充分栄養を与え発育の障害をなくす意味から栄養豊富に購入飼料を重点配合する。〇魚のアラを魚粉代用として与えているため、青菜の給与には特に注意を払う。
肝臓肥大の防止とニワトリの健康維持のため。(結果)
〇鶏より排出される鶏糞の利用により化学肥料の節約ができ、米麦をはじめ、主要作物など経営全般においては収量の増加をはかることができた。
〇年々鶏の飼養羽数の増加に伴い年間の農業所得も徐々に増加。
(考察)
〇こうした体験を通じて、経営の収益を髙めることは、経営における生産過程を把握し、高度の技術と細心の注意、愛育の精神など知的、情的要素を積むことによって、生産規模の拡大をはかることだということをこの体験から収得することができた。
〇養鶏を徐々に経営するにしたがって部落の人達の関心も髙まり、昭和32年度においては200羽前後の飼養羽数が、現在においては2500羽と増加。
〇今后は共同販売体制を確立し、養鶏を尚一層拡大し、所得倍増の夢を実現すると共に鶏糞の燃料利用も現在計画。
(全文はこちらの記事にまとめています)佐々木漬物の「原点」|発表「養鶏を主体とした私の経営改善」編_全文 – ピューレの森 (puree-nomori.com)
日々の農業経営に向き合っている時に日頃から思っていたこと
農業は体力仕事であるため「健康でいること」がとても大切だと当時から思ってました。
このような日々の改善の中である時ふと「何で米ぬかに埋まっている野菜はいつまで経っても腐らないんだろう?」と気づいたことがきっかけだったと言います。
「ぬか漬け」は野菜を元気にするだけでなく人間も健康にするのではないかと思い、そうして独学で学びながら試行錯誤の上、乳酸発酵のぬか漬けが出来上がり、今日までそのぬかを40年間継ぎ足し継ぎ足しで作り続けているということです。
当時は勉強もなにも情報を得ることが出来ず「普及員」さんや周囲の諸先輩方から教えて頂いたそうです。
科学と研究が進みぬか漬けには発酵微生物が活発に活動している事が判明され、成人病予防に効果がある事が明らかに成ったので、食物繊維を多含している白菜に注目し、私の経験を活かし三年間かかりましたが乳酸発酵白菜を誕生させることに成功しました。
歴史ある製法、経験、技術を生かして開発しました。これを食する事により乳酸菌は腸に到達し、そこで活発に増殖し、そのため腐敗菌や異常発酵菌を抑える事が出来、また、食物繊維が多く含まれているため宿便・便秘を改善し、整腸作用と体温を上げる事で昔から健康維持食品として利用されて来ました。
佐々木漬物の「原点」|「乳酸発酵白菜ぬか漬け誕生秘話」編 – ピューレの森 (puree-nomori.com)
これだけ身体によいとされるぬか漬け。”ぬか”の持つ力を御主人は経験から知り、全力を注ぐことになります。
米ぬかを養鶏場の土に、飼料に。
鶏の場合は集団で土の上で生活し、糞をし、その土をついばみます。
米ぬかが混ざった土には発酵の力が備わり土に栄養分が蓄えられます。悪い菌が減り良い菌が増える。養鶏場の土が元気になり、その土をついばむ鶏も元気になる。鶏糞を発酵させて肥料にし、それが好循環を生み鶏がより健康的に、飼料の節約に、収益確保に繋がっていきました。
当時の青年は実際に200羽から4年後には2500羽まで増やしています。
鳥インフルエンザによる採卵鶏の殺処分は過去最高を更新…
昨年末のニュースでは、「今シーズン、全国各地で鳥インフルエンザの発生が異例のペースで相次ぎ、処分されるニワトリなどの数が過去最も多くなるおそれが高まっている」と報道されていました。
2022年12月28日までにおよそ730万羽が殺処分されており、過去最多であった2020年シーズンの987万羽を上回る恐れがあると懸念されておりました。
そして実際に、感染発生件数は2023年2月20日時点で採卵鶏1300万羽以上が殺処分されたと報じられています。
佐々木漬物の御主人はこの現状に嘆いています。
畜産業界での衛生管理は、牛を頂点に次が豚、最も位が低いのが鶏
過去最多を更新した2020年シーズン当時にも、当然、嘆き節は報じられていました。なぜ止まらないのか。
”生産者の衛生管理への意識が欠如している”ことが最大の理由としていました。
鳥インフルエンザが発生した養鶏場の多くでは、ウイルスの運び役であるネズミなどの小動物が侵入できる隙間が壁や天井にあることが判明。
もちろん、衛生管理を徹底し努力している方事業者の方々が大半でしょう。しかし中には衛生改善を強く要請しても、反社会勢力まがいの事業者もいて自治体では手に負えないケースもあり、対応に苦慮しているという事情も耳にします。
集団で”見えない敵”を相手に対策を取り続けることの苦労
ヒトの場合、インフルエンザは「呼吸器」と「腸管」で増殖します。
鳥インフルエンザは水禽類(水鳥)の「腸管」で増殖し、鳥間では(水中)の糞を媒介に感染します。
ヒトにとって腸管で増殖するウイルスと言えば胃腸炎で知られるノロウイルスやロタウイルスをはじめとするウイルスが思い浮かびますが、トイレや人の手指を介してヒトからヒトへ感染が拡大します。
トイレ使用後の手洗いが不十分だと目に見えないウイルスはヒトからヒトへと感染し、腸管で増殖し、どんどん拡大していきます。
私達人間は、手洗いとマスク着用の徹底により、自分が持っているかもしれない(不顕性感染)と想像して行動に移せば少しでも感染拡大を抑えていけます。
実際に前職においてノロウイルスの定期検査を行ったところ、従業員の2%が不顕性感染者と言う結果でした。100人の従業員がいる営業所で2人が無症状でウイルスを保有したまま勤務していたということです。
※本来、ノロウイルスの定期検便は行いません。ある一部の病院において定期検査の要請があり実行していた所の例年の平均数が、一定数2%は常にいたという結果でした
それでも食中毒事故に繋がらず、また従業員同士の感染が防げたことは手洗いとマスクの着用、消毒の徹底が常日頃から出来ていたからだと思っています。
目に見えない敵を相手に、それも365日一時も気を抜いてはいけません。そしてゴールはありません。
従業員同士の感染拡大、食事への二次汚染、特に病院や高齢者施設・障害者福祉施設・保育所への食事提供というのは、より免疫力が低下している方々のため、いわゆる一般のレストランよりもさらに一層の対策を厳しく徹底し続けなくてはいけません。
無症状でウイルスを保有していた人が勤務していても、二次汚染防止・三次汚染防止に努めているからこそ感染拡大を防止できているのです。
鶏の腸内環境が改善されれば糞を媒介とした感染を減らすことができるのでは?
ヒトがウイルスに感染しても免疫力が高ければ”不顕性感染”として症状を発症することなく元気でいられます。それでも二次感染させてしまわないように手洗いとマスク着用で「知らず知らずのうちに周りに感染してしまう」ということを防ぐことができます。
「免疫力が高い」、つまり「元気」でいられればウイルスに打ち勝つことができるということになります。
鳥インフルエンザは渡り鳥が感染を拡大させてしまいますが、鶏もヒトと同じで、免疫力アップでウイルスに打ち勝つ力、すなわち米ぬかやワラ、鶏糞などを利用して発酵のチカラで土を元気にし、鶏を元気にすることで打開できるのではないでしょうか。
悲しいのは殺処分?卵価格の値上がり?
先日、日曜日の夜にスーパーに行ったら、卵が品切れでした。その店頭に並ぶ1パック200円台のものから300円以上する商品まで、全て売り切れていました。
現在の世の中の影響により卵の価格が昨年2月と比較すると2倍近くに高騰しています。
ちょうどその同じ日に、卵の価格高騰による外食産業が悲鳴を上げているという記事を目にしました。売上高に影響しますのでこの現状に企業は大打撃です。
こちらの記事は経済ニュースが趣旨の内容でしたが、それでも辛いのはやはり殺処分された鶏の方に目が行きます…
一日でも早く鳥インフルエンザも新型コロナウイルスも収束に向かうことを祈ります。
佐々木漬物の御主人と、そんな話をしました。