私の現在の活動のきっかけとなる経緯をお話したいと思います(高齢者や病気の方のお食事に関わっていけること、その中でフードロス削減の取り組みを活かしていきたいということ、そう思うようになったいきさつをご紹介しております)。最後までお付き合い頂けると嬉しく思います。

目次
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前職の紹介
私は以前、給食会社に15年間勤めていました。病院や高齢者施設などの福祉施設を中心とした、給食提供サービスの受託会社です。給食運営業務のみ委託され、従業員は契約先の病院または福祉施設で働くことになります。施設側からの外部委託方式は、全面委託や部分委託など手段はいくつかの種類があるのですが、現状では全面委託方式が多く見受けられます。
給食会社では輸入食品が当たり前?現場でのメリット

私が勤務していた給食会社では、使用する食材のほとんどが輸入食品でした。
肉も魚も野菜も、食材のメインとなるものが輸入の冷凍食品です。
※すべての給食会社がそうではありません。また、給食を委託せず施設で運営(直営方式)されている所もたくさんあります。あくまでも私の知る範囲でお話しているだけですので、参考程度に読んでいただけると嬉しいです。
病気の人や高齢の方にこそ、国産の、美味しい野菜を食べて少しでも元気になってもらいたいという思いが心の奥底にありましたが、会社員である以上は指定の食材を使用する決まりに従っていました。逆に、近隣の店舗で購入したり個別に取引契約することは基本的にしてはいけないことになっています。
現場において会社指定の食材を使用するメリット、冷凍のカット野菜を使用するメリットは主に以下の6つが挙げられます。
✓人手不足の解消
給食業界は慢性的な人手不足のため、野菜の洗浄、仕込みの手間が省ける
✓仕入れの安定性
不作の時でも献立を変更することなく、通年で食材を安定的に大量に購入できる、災害時に物流が止まっても最悪在庫品で対応できる時もある
✓在庫管理しやすい
予定していた食数より余っても、冷凍のため保存が効く
✓衛生の安全性
トレーサビリティが明確な食材の取引のため、衛生上担保されている
✓安価・価格の安定
病院や福祉施設は厚生労働省管轄で食事代の予算が決められている。予算内の献立作成に収め易い
✓水道代・ゴミ処理代の削減
現場で野菜の洗浄、皮むき処理をしなくて良い
(水光熱代は施設側負担の場合が多いので、給食会社のメリットというわけではないのですが記載しております)
現場だけではない、企業としてのメリット
また給食会社(本部)側の事務的処理においても、メリットがあります。大まかに4つ挙げます。
✓物流の集約化
大量に仕入れられる、コストダウンに繋げられる、不作の時でも融通が利きやすい、運搬に関わる様々な問題も低減できる(ドライバー不足、ガソリン代高騰、環境汚染の低減)
✓発注時の一括集約化
発注側だけでなく受注側もお互いに一括で取引が出来るため、お互いの手間やミスが省ける
✓経費精算の一括会計化
受発注と同じく、取引が会社一括で行えるためお互いのコストメリットに繋がる
✓終売、商品改廃時の対応の一元管理化
本部で一度に行えるため、現場での負担が少ない
など、概ね大手の給食会社は食材の取引先が決まっており、その中でのやり取りが最もスムーズで、安全で安心という現状です。
輸入食品・指定食材にはもちろんデメリットも
メリットがあればデメリットもあります。大きく5つご紹介いたします。
✓使用したい食材が使えない
品揃えは豊富にあるものの、違うメーカー、流行り物、ご当地お取り寄せおやつなど普段取り扱っていないものは献立に取り入れられない
✓生野菜を調理するときと比べ、見た目や食感が悪くなる食材もある
緑色の野菜が茶色くなってしまったり、カサが想像以上に減ってしまったり、冷凍品を使い慣れていない場合、ふにゃふにゃで食感が悪くなったりすることも
✓大量調理に不向きの食材もある
一つ上の説明と重複しますが、家庭で料理する時と異なり、調理から提供までに所要時間がかかること、大量の食材を一度に火入れ、冷却により見た目も食感も悪くなってしまうこともある
✓品質が悪い食材・悪い時期もある
国産品と異なり、素材の味が薄い(しない)、筋っぽいなど、中には人参がすでに木質化している状態の商品もありました。さすがにその時はクレーム処理へ報告しましたが、国産品の、柔らかい、みずみずしい、味が濃いというイメージとは程遠かったです。
✓災害時、停電時に冷凍品が溶け、在庫している食材が使えなくなる
これは滅多にないことですが実際過去にありました。災害が年々増えているため、こういったリスクも想定していなくてはいけません
メリットとデメリットをまとめると
大前提に衛生的に安心な食材を安定供給できること、時間内に調理から配膳までを終えること、予算内に収めた献立作成をして栄養価も満たせることで、大量調理は成立します。
理想は国産の生野菜を使用したいという思いはありましたが、現実的にはメリットの方が勝っているため、給食会社で働く上では納得・理解して使用していたつもりです。
しかしこれはあくまで提供側の理由であり、理解しようと自分に言い聞かせていたというほうが正しいかもしれません。
例えば具体的にレンコンでお話しますと、病院や高齢者施設ではレンコンはあまり提供しません。
提供出来ても、噛むことの出来る方、尚且つ消化に問題のない一部の方に限られます。
それ以外の方には提供できませんので、工夫して提供している施設以外では、あまりレンコンを献立に入れないケースが見受けられます。
また、私が前職で使用していた外国産の冷凍のレンコンや水煮レンコンは素材そのものがとても硬く、加熱しても柔らかくならず、水煮に至っては圧力鍋を使用しても柔らかくなりませんでした。産地を変えれば使用できる食材も、前述したように簡単には変更できません。
何事もそうだと思いますが、総じてメリットを考えての仕組みであり、個人的な意見や少数意見は当然ですが叶えられないものだと、規模が大きくなればなるほど仕方のないことだと思います。
フードロス削減の取り組みに対する思い
話は変わりまして、私はかねてよりフードロスに対する意識がありました。基本、何でももったいないと思う性格で、簡単に物が捨てられないだけなのですが。自宅で自炊する際にはいくつか気を付けているポイントを実践しています。いずれそういったお話もご紹介できたらと思います。
また、母親の実家が山形の専業農家で、偉そうなことは語れませんが、ほんの少しだけですが農家さんの苦労も身近に感じられる距離感ではあったように思います。
先ほど、前職において輸入食品の使用に対して理解していたというお話をしました。
割り切って仕事をしていましたが、葛藤もありながらというのが正しい表現になります。
そして、せっかく退職して自分の思うことを形にできるチャンスがあるのなら、それを実行したいという思いがあります。

例えば先ほど具体的にお話したレンコンですが、規格外野菜として廃棄が多いと以前テレビで見たことがありました。レンコンは縁起物として使用することが多いため、曲がっていたり大きさにバラつきがあったりすると流通しにくいとのことです。収穫の様子もテレビで拝見しただけですが、深い泥水の中に入って手作業で掘るため、重労働でとても大変そうに見えました。せっかく育てた、食べられる野菜を売りに出せない。
私はレンコンが大好きです。個人的なことですが、私の好きな野菜ランキングの上位に入るほどです。
シャキシャキしていて、でも蒸すとホクホクしていて、他にもすりおろして使ったりと、食感が良いだけでなく色々な食べ方で楽しめる食材の一つです。
外国産のレンコンを食べたときは、国産との違いに驚きました。
売りに出せなくて困っている農家さんがいる一方で、その美味しいレンコンを食べてもらいたい人たちもいる。
それを繋ぐことを仕事に出来ないか。
どうしたらそれが実現できるのか、そんなことを妄想していました。
チバベジとの出会い
そんな時にネットで情報収集をしている中、“チバベジ”という、規格外で市場に売りに出せない野菜を売る団体の方々のホームページを目にしました。
チバベジホームページ
2019年に発生した台風で梨農家さんの救済をきっかけに始まったとのことですが、そこでは直接、農家さんの言い値で買い取るという仕組みで、その野菜たちをそのまま直売、またはスムージーなどに加工して販売するといった取り組みを活動されていました。
ほかにも規格外野菜を取引する団体や企業をネット上で目にします。昔に比べて増えたように感じます。
ですがほかと大きく違うのは、“農家さんの言い値で野菜を買い取る”ということです。
捨てるものをタダでもらうという発想ではなく、正しい価値をつけることに感銘を受けました。
たしかに、目安となる指標や流通の効率化のための統一化は必要です。でも規格から少し外れただけで値が付かないというのは違うと私も思います。私も、その取り組みに参画したい、その取り組みを継続させていきたい、そう思うようになりました。
継続させていくには食べる人、購入する人が必要になります。
私も購入する一人となり、それを高齢者の方たちに食べて頂ける仕組みを作っていけないか。
妄想はどんどん広がっていきました。
規格外野菜の利用を広げていくには

各家庭で購入する輪が広がると嬉しいと思う一方で、大量の規格外野菜を一度に消費することはとても難しいとも感じています。通常、収穫した野菜を選別しながら規格外のものと分けていくのですが、量としてはそこまで多く出ない場合もあれば、多く出る場合もあります。
例えば、例年よりも急激に気温が上昇してしまったため一気に野菜が育ちすぎてしまった、台風で一気に野菜がダメになってしまった、など、気候変動や災害時には、一度に大量に出てしまいます。
これらをさばこうにも加工しようにも、痛みがどんどん進んでしまうため、救うには一気にやらないと間に合わないのです。
一番手っ取り早いのは一日で5000食提供するような工場や大企業の社員食堂などでしょうが、そういうところでは仕込み作業に時間がかかってしまい、使うことはできません。
例えば白菜を一人50g分の小鉢として一品提供する場合、出来上がり量として25kg必要になりますが、傷んでいるところを取り除きながらの作業を考えると30~35kgの白菜が必要になります。
白菜一玉2kgとして計算すると、15~18玉分を仕込むことになります。
病院や高齢者施設では一日(三食提供)で150食~600食(人数で言うと50名~200名)くらいの規模となりますので(もっと大人数の病院では一日に2500~3000食ほど提供するケースもありますが)、前述したように指定取引以外の食材は使用できない施設が大多数です。
そこで生鮮野菜のまま販売する以外に、商品化している方々もたびたび見受けられます。
ネットで検索すると、ピクルスにしたり野菜パウダーにしたり。どれも魅力的な商品がありました。
私は現実的に出来る取り組みとして、フードロスと高齢者の食事を掛け合わせることを実現させていきたいと思っています。
こういった取り組みを行っているということを知って頂くこと、利用の輪が広がること、高齢者の方に、輸入食品でなく国産の美味しい野菜を食べてもらいたい、できることから一つずつ始めていきたいと思います。
さいごに 現在の活動と今後の目標
給食会社を退職したあと一般企業で約2年間お世話になっていたのですが、こちらも先月退職しました。
フリーランスとして執筆活動や地域の活動に参加しながらフードロスの活動に取り組むため、その野菜たちを使用して高齢者のお食事作りに関わったり、商品化に向けて動き出していきたいと思っています。
活動の輪が少しずつでも広がっていけると嬉しく思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。