皆さまこんにちは。「2025年問題」というワードを聞いたことはありますでしょうか。間もなくその時期を迎えます。これはいわゆる団塊の世代が75歳を迎え、高齢者人口全体の約3分の2が後期高齢者になると予測されており、国の財源と人材が不足する懸念をはじめ様々な問題が想定される事象の総称を指します。
内閣府
第1節 高齢化の状況|令和元年版高齢社会白書(概要版) – 内閣府 (cao.go.jp)
流行語大賞2014に【2025年問題】がノミネートされていましたが2012年の診療報酬・介護報酬同時改定時には「地域包括ケア」という概念を提唱しています。皆さんも学校の授業で少子高齢化について学んだ記憶もあることでしょう。栄養士の養成校ではこの話が中心のように個人的には感じていました。栄養士の役割として0次予防、健康寿命をいかに延ばすか、疾病予防に力を発揮する役割だと。
政府が打ち出しているのは「ときどき入院、ほぼ在宅」という施策です。これは寝たきり老人の数を減らすことに力を入れることで、限られた人材でも介護サービスの質を維持していこうというもので、在宅医療を推進しています。
厚生労働省
在宅医療の推進について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
目次
入院から在宅に切り替わることで想定される問題
先日あるお宅でこのようなことがあったとお話をお聞きしました。
通院同行(院内介助)の依頼があり病院に現地集合でしたが時間になってもご利用者様がお見えにならないため、一度ご自宅へ迎えに行くことになりました。到着し何度かインターホンを鳴らしたのですが反応がありません。海外にいるお子さんに報告をし、電話をかけて頂いた時には繋がったとのことでしたが玄関前に到着しても物音がしないとのことでした。
困っていた所、中から一度声が聴こえたそうです。「ちょっと待って下さい」と。しかしその一度きりでまた物音が一切しなくなったとのことでした。
最終的には救急車を呼び、救急、消防、警察が来て団地5階の窓を割って、無事救助されたようです。
この前日、海外にいるお子さんが電話した際に、足の付け根もしくは膀胱の辺りに痛みがあることを訴えられていたとのことでこの日の通院時にそのお話を担当医にお伝えする予定でいたそうです。
救助出来た時の様子は、自力でトイレに行けず服も布団もビショビショの状態であったそうです。お陰で幸い命に問題はありませんでしたが、はじめは10時に病院で待ち合わせの所、30分経過してもいらっしゃらないためご自宅に向かい11時に到着し、救助されたのは12時回った時でした。
合鍵があればせめて11時に向かった際に助けられたかもしれません。実はとあるサービスで合鍵を預かっていたそうです。しかし親族の立ち会いがないと責任問題になるからと使用することが出来ませんでした。
救急救命士の方のSNSやブログなどを拝見すると、窓を割って入るのは最終手段とのことです。今回も、消防士さんが割れた窓の対応について心配で何度も何度もお話を受けたそうです。
また警察の立ち会いは必須ではないようです。しかし疑われたり余計な事案に発展することを懸念すると立ち会って頂くのが安全ですね。
その後の対応
割れた窓ガラスは養生テープで応急処置をしていただけですので早めに修繕が必要になります。また換気をし、布団と着ていた服を洗濯して乾かして片付けるところまで誰かがやらなくてはいけません。お子さんは海外ですし結局こちらで対応してほしいと依頼がありました。
・窓の修理の立ち会い(手配、見積、会計はご家族)
・掛布団と敷布団をコインランドリーで洗濯、乾燥(5階から階段で運び出し)
・シーツ類、来ていた洋服一式を洗濯、干すして取り込み、片付けるところまで
・コインランドリーに再び戻り回収し、5階まで運ぶ
想定される課題
冒頭にお伝えした通り日本は少子高齢化が進み、ピークを迎える「2025年問題」と言われる時期に差し掛かっています。政府は問題を解決すべく見直しを図っています。
介護保険制度が2000年に施行されて以来、特に診療報酬と介護報酬の改定が同時期に起きる6年ごとには大きな改定を繰り返してきました。その中で在宅医療に大きく舵を切り、医療や介護の現場で働く方々は改定に合わせて対応をしてきました。そうすると様々な課題が表面化してきます。私が今さらこのように記事にするまでもなく、働いている方々はこういった問題にどう対処していくかをすでに試行錯誤しながら従事されていることと思います。
実際に、ある救急救命士の方のブログを拝見していると2015年当時の記事に地域包括ケアシステムについて学んだ時のことが書かれていました。財政状況、人材不足の解消のためにこれからは病院や施設から、在宅医療・在宅介護に切り替えていく。「しかしこの地域社会の在り方の構図に救急隊のことが記載されていない…」と当時は懸念されていました。医療従事者だけでなくあらゆる場面において関わる方すべてに、想定されること・想像されることがあるでしょう。救急救命士のような最前線で働く方にとってはごく自然に想像がつく懸念事項かと思います。
病院や施設にいれば夜勤体制がありオンコールで対応します。これが在宅に移れば24時間体制で誰かが緊急時に動かなくてはなりません。これは人材不足の解消と言えるのでしょうか…
とあるサービスで鍵を預かっていてご家族がその鍵を使って開けていいと許可していたため、その鍵を使えば良かったのではないでしょうか。窓を割る必要はなかったかもしれません。どのようなお約束でそこで鍵をお預かりしていたかまでは分かりませんが、親戚が立ち会って頂けないと使わせられないとのことでした。このような事例は今後ますます増えるでしょう。独居で身寄りのない方は後見人制度を利用するケースも増えると思います。安否確認サービスは増えていますが鍵がかかっている時の救出方法は…その時に救える命、救うために鍵をどうするか。防犯と緊急時とのはざまで責任問題という理由で躊躇するのではなく、人命救助のために動く方を守れる制度もあると良いと思います。
自治体での取り組みも
このような高齢者宅の鍵問題に取り組まれている地域もあります。自治体によりますのでお住まいのサービスを探してみるのも良いですね。今回はこの2つだけご紹介いたしますが、全国には様々な自治体の努力が見受けられます。
大阪府寝屋川市_緊急時安否確認(かぎ預かり)事業
地域貢献事業(緊急時安否確認(かぎ預かり)事業 | 社会福祉法人東和福祉会寝屋川苑 (neyagawaen.com)
近隣の人たちが心配しても鍵がかかっていては安否確認が出来ません。その結果、発見が遅れ、孤立死という不幸な事故に繋がる場合も出てきます。この事業はこのような不幸な事故を未然に防ぐことを目的として、事前に家の鍵をお預かりし、様子がおかしいと思われる時に、鍵を使って家屋内に入り安否を確認するという仕組みです。この取り組みは社会福祉協議会、校区福祉委員会と市内協力施設が協働して実施しています。
千葉市_高齢者緊急通報システムのご案内
ひとり暮らし高齢者が急病等の緊急時に迅速かつ適切な対応が図られるように、自宅に緊急通報装置(機器本体・ペンダント型発信器・安否確認センサー・火災センサー)を設置します。
緊急ボタンを押した場合やセンサーが異常を感知した場合、ガードマンが自宅に駆けつけるほか、必要に応じて警察・消防に通報します。鍵の預かりについて
千葉市:高齢者緊急通報システムのご案内 (city.chiba.jp)
緊急時にいち早く対応するため、緊急通報装置の設置時にご自宅の鍵(1本)を預かります。
決定通知が届いたら、設置日までに鍵の準備をお願いします。
※緊急通報に基づく救急活動及び安否確認センサーでの異常確認時のみ鍵を使用します。
お預かりした鍵は、高度なセキュリティシステムが配備された事業所にて厳重に管理します。
さいごに|とっさに機転の利く方も
私が以前作り置きの料理のサポートに入っていたご利用者様のお話です。冬のことでしたが夜中にトイレに行こうとしたところ、トイレの手前で暗くて転倒してしまったことがありました。
転倒時にろっ骨を折り入院してしまったのですが、その際、「鍵だけは開けておかなきゃ」という意識があり、最後の力を振り絞って玄関のカギを開けてから倒れたそうです。痛くて苦しくて辛かったけど、鍵が開いてないと救出できないって前に聞いたことあったから、と話して下さいました。団地でトイレのすぐ横が玄関なので、玄関の目の前で転倒したことになります。そういう好条件もあったのでしょうがその当時は86歳でしたがなんて機転の利く方なんだと、このお話を聞いた時、その力強さに驚かされました(アルソックに入っていたため緊急時のボタンを押して、救助に来て頂いたそうです)。その方は一か月後に無事に退院されて、現在は回復されました。退院したての頃は以前より痩せ細ってしまったように見えましたがその後ご自分でお肉を焼くくらいのことはできるようになり、これまで続けていた団地内での朝のラジオ体操にも、再び行けるようにまでなりました。
「地域包括ケアシステム」が推進されていますが独居の方が増えており、また同居している方がいると介護保険で使えるサービスは限られてしまいます。
訪問看護、訪問介護には車で向かうことが多いと思いますが駐車場問題もありますよね。。
また、ご利用者様が女性ですと、身体介助に来て下さる方は女性が良いとご希望されるケースが多く、女性の担い手が増えてほしいと切実に思います。
2024年には診療報酬・介護報酬同時改定を控えている中で、日常的に起きている事案に目を向けてこういったところへも見直しされるよう焦点を充てて頂きたい、、、そう思った事案でした。
本日も最後までお付き合いくださいまして、有難うございました。