皆さまこんにちは。今や一般的なワードとなったフードロスですが、皆さんはまず何を思い出されるでしょうか。食べられるのに食べきれなくて捨ててしまう。規格外で市場に出回れないもの、ファストフードのように出来立てのおいしさを損なうと廃棄、期限切れと闘うコンビニ、スーパーなどなど…
母親の実家が専業農家ということもあり子供の頃は遊びに行った時手伝いとは言えない程度ですが少しだけ手伝ったこともありました。収穫したものを優・秀・良に分け、それ以外のものははじく、という作業も見てきました。また学生の時はファストフードでアルバイトもしていたので一定時間が経過したものは廃棄もしていました。でも印象に残っているのはやはり恵方巻です。恵方巻といえば食品ロスの代名詞のようにもなってしまっていますが過度な販売競争が大量の廃棄を生み出しているとしてあんなこと許されていいものではないと私も当時思いました。2017年、廃棄された大量の恵方巻きの写真がSNSで拡散され議論を呼びとても大きな話題となったのを覚えています。
私は基本的に何でも勿体ないと思ってしまう性格で、食品だけでなくビニール袋一枚でも捨てられません。空き容器が出るとまず何かに使えないかなと取ってしまいます(笑)結局雑紙として集積所まで捨てに行きますが、燃えるゴミにならずリサイクルに回せるだけ罪悪感が軽くなります。無駄な行動をしていると時間も勿体ないと思ってしまいます。それでもいつも無駄な動きが多いですが…。宅配便の不在票が入っていると、業者さんに無駄な動きをさせてしまったと感じていました。今は事前に配達予定の連絡が届くシステムも増え、少しでも効率的になっていることを嬉しく思います。昔は衝動買いもよくしていました。今は必要なものだけ買うように変わりましたが、当時の年齢とストレス環境がそうさせていたのか無駄なことばかりしていたなぁと思います。食品ロス以外にも合理的に変わることは嬉しく思います。
給食でも食品ロスをたくさん見てきました。病院や高齢者施設などは食事提供システムに関しては基本的に予約制のため、恐らく一般的な飲食店よりは廃棄は少ない方かと思っています。そのためか給食事業での食品ロスについて話題になることはほとんどありません。それよりも世界全体で見た時の日本での食品ロスの大きなところから取り組んでいく方が優先的に効果が出るため、そこまで取り上げられることはなくて当然かもしれません。でも小さなことからコツコツと、全国の病院や福祉施設の食品ロスも減らせれば大きな一歩に繋がると思っています。
以下は行政はじめ様々なところでご紹介されているものですのでおさらいのつもりでざっくりとだけ掲載させて頂きます。また私でも出来る削減の取り組みを少しだけですがご紹介しております。
そして給食事業での食品ロス事情、規格外野菜が使用できない理由などをご紹介していますが、こういった背景から今の私が出来ることを実現させていきたいことを少しお話していますので、最後までお付き合い頂けると嬉しく思います。
目次
目次
食品ロスの問題点
食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢
農林水産省のホームページを見て頂けるとお分かりのように、大きく”環境”と”食糧”について世界的に問題視されています。
・環境問題
農林水産省ホームページ 161227_4-194.pdf (maff.go.jp)
食糧生産により多量のエネルギーを使用/水分の多い食品は運搬や焼却でCo2を排出
市町村におけるゴミ処理経費2兆910億円(一人当たり16400円/年)
・食糧問題
世界では9人に一人が栄養不足(8億人)
日本の食糧自給率、摂取カロリーベースでは先進国の中では最低基準
世界の取り組み
2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において、⾷料の損失・廃棄の削減を⽬標に設定
日本での発生量
令和元年:570万トン、うち家庭46%、事業系54%
食品ロスとは:農林水産省 (maff.go.jp)
平成30年:食品廃棄物は2531万トン、そのうち600万トンが食べられるのに捨てたもの
一日当たり茶碗1杯分、昨年に比べて5%減、推計開始平成24年度以降、最少
”3分の1ルール”ご存知ですか?
賞味期限3か月を切ったものは流通に出せないと言われています。
✓商慣習
・⾷品⼩売業において賞味期間の1/3を超えたものを⼊荷しない
・2/3を超えたものを販売しない
・先に⼊荷したものより前の賞味期限のものは⼊荷しない
✓販売機会の損失を恐れた多量の発注
✓消費者の賞味期限への理解不⾜
⾷品循環資源の再⽣利⽤等の促進に関する基本⽅針(令和元年7⽉)
⾷品リサイクル法の基本⽅針(2019年7⽉)、⾷品ロス削減推進法の基本⽅針(2020年3⽉)において設定。具体的な取組(⾷品関連事業者・消費者・地⽅公共団体・国が実施)を同じホームページより抜粋いたします。※起点となる2000年度は、⾷品リサイクル法成⽴の年度
【⽬標】 2000年度⽐(547万トン)で、2030年度までに半減させる(273万トン)
✓納品期限の緩和などフードチェーン全体での商慣習の⾒直し
✓賞味期限の延⻑と年⽉表⽰化
✓⾷品廃棄物等の継続的な計量
✓⾷べきり運動の推進
✓⾷中毒等の⾷品事故が発⽣するリスク等に関する合意を前提とした⾷べ残した料理を持ち帰るための容器(ドギーバッグ)の導⼊
✓フードバンク活動の積極的な活⽤
✓⾷品ロスの削減に向けた消費者とのコミュニケーション、普及啓発等の推進 等
企業努力も進んでいます
たとえばコンビニエンスストア最大手のセブンイレブンジャパンでは賞味期限を延ばしました。ニュースやCMでも取り上げられていましたのでご存知の方も多いかもしれません。また他の企業でも様々な取り組みを行っていますので、そういったことが5%削減に繋がっていると思うと嬉しく思います。
長鮮度商品の開発
食品ロスの低減・廃棄物の減量化|セブン‐イレブン~近くて便利~ (sej.co.jp)
ご家庭で工夫できること
このあたりもあちこちで目にしますので実践されている方も多いと思いますが、こういった一人ひとりの積み重ねで廃棄が減ると思っています。
✓賞味期限が一番古いものから手に取る(スーパーも、店舗によっては陳列の工夫ももう少し必要と思います…)
✓値引きしているものを購入
✓自宅の在庫を確認してから購入
✓賞味期限を見える向きに冷蔵庫に収納
✓目に届きにくいところに置かない
✓日本の賞味期限は優秀。自分の体調を見て食べられるか判断
✓消費期限も、五感で確認。もやしは水が濁ってきたら危険、豆腐は舌がピリピリするとダメ、など知っておく
✓容量の大きなものを買ったときは冷凍。基本、ほとんど冷凍できる
コロナで生産者が大打撃…でも飲食店などでの提供量や注文量の見直しになったかもしれない?
業務用や飲食店向けに卸していた生産者や卸業者がコロナで大打撃というニュースを何度もみました。代わりに家庭で食べられる商品の売り上げが好調。業務用と家庭用の売り上げのバランスが変わることは理解できますが、それにしても飲食店などで食べきれないほどのボリュームをコースなどで並べていた様子は以前より気になっていました。また、世の中には”目で食べる”人もいます。そんなに食べきれなくてもテーブルいっぱいに色んな料理が並んでいるだけで満足、実際は食べないけど色んなものを少しずつ食べたいから色々注文、こういうケースでも、飲食店にとっては売り上げに直結しますがお客さんが食べ残せばそれは廃棄です。居酒屋など宴会での料理の食べ残しや、複数人での外食での食べ残しは私はいつも気になる方でした。最後の一口を誰も手を付けないなら誰でもいいから自分でもいいからお腹に入れて食器を下げてもらいたいと気になっていました。こんな時いつも相田みつをさんのあの有名なフレーズを思い出します。「奪い合えば足りぬ、分け合えば余る」。
宴会での⾷べ残しは⾷品提供量の14.2%(7⽫のう ち1⽫が廃棄されていることに相当)という統計が出ています。コロナが収まってまた宴会ができるようになってほしいですが、その時には食品ロスを意識した食べ方が出来るようになるといいですね。お店側は多めに出すのではなく、食べきれる量で提供することが当たり前、食べる方も、食べきれる量で注文することが当たり前の世の中になってほしいです。
また旅館などに宿泊するとこれでもかというほどのおもてなしを受けます。お客さんに満足して頂く心遣いなのでしょうが、これがいつも無理にでも食べきろうと思い食べてしまい、お腹がパンパンで苦しくなります。食品ロスの観点から一品くらい減らしても問題ないのではないかと思ってしまいます。
給食事業のこともちゃんと載ってました
給⾷事業は恐らく手を付けられる専門家がいない分野なのではないかと思っております。病院で勤務する栄養科や関連する科の方々でも、現場を知らなければいつどのようなタイミングでどのように食品がロスとなってしまうのか、実感として説明できる方はいないのではないでしょうか。それ以前に食品ロスに全力を注げるほど医療業界はそれどころじゃないというのが現実的かもしれません。
先ほどの農林水産省のホームページに、各分野での削減目標が記載されていて、そのうち給食事業でも設定されていました。その他としてはじかれていたらさみしいと思っていたので、同じ土俵に乗って給食事業でも出来ることは取り組んで下さいと言ってくれているようで嬉しく思いました。ただ数字の解釈が難しく…「 332kg/百万円(〜2019年度)→ 278kg/百万円(2020年度〜」の記載ですが、金額ベースで54kg削減?補足が欲しいところです…
アイキャッチ画像の給食の写真にバナナが載っていますが、普段は普通に問題なく食べられていたそうですがこの日はあまりにも皮が固くて熟しきれていなかったようで、高齢の方や力が出せない方は自分で皮を剥けずに看護師さんに手伝ってもらったそうです。笑い話として話を聞いていましたが、私も昔仕事をしていて前日納品のバナナでそんなこともあったとお伝えしました。八百屋さんから「思ったより熟されてなくて…ゴメンネ」と言われたことがあり、その中で献立変更が可能な食数なら急きょ他の果物に変更したこともありましたし、またその逆で、熟してしまいスイートスポットが気になるバナナを病院側から「取り替えて」と言われたこともありました。美味しさの証拠なのに…とその時は悲しい思いをしながら急きょフルーツカクテルといった形でカットして対応することになりました。提供側だけでなく相互で理解する必要があるのではといつも思っていました。その時は缶詰と合わせてフルーツカクテルにした分、結果的に余ったバナナは廃棄しました。特に病院では必ず毎日果物を提供します。その中でもバナナはこのようなこともあり在庫管理が難しいのですが、それを思い出しました。
給食施設で出るロスだって立派なフードロス|大まかに5項目
簡単に言うとこれだけあります。
【仕入れロス】【仕込みロス】【調理ロス】【廃棄ロス】【賞味期限切れロス】
私がこれまでに仕事をしていて勿体ないと感じていた給食事業でのロスをいくつかご紹介いたします
✓献立作成時は商品規格と使用頻度の計画が立てづらい
病院は4週間サイクル、福祉施設は3か月サイクルを季節ごとに変化をつけるなど、一定期間の中で食材の組み合わせが続かないように献立計画。使用頻度の少ない食材は一度開封して使い切れないと期限切れにより残りを廃棄
✓配送条件を考慮出来ずに献立作成すると、週明けに期限の短い食材が入ってしまう
例えばパンや豆腐のように消費期限が短いものを月曜日の献立に取り入れてしまうと、週末に配送されてしまい、当日には使えなくなってしまうこともある
✓予定献立=実施献立 記録の義務付け
提供に違いが出ると、紙面上でレシピの変更点の記録・保管が義務付けられている。そのため変更を極力しない
提供数増加の場合、提供量が減ってしまうことが無いように予め多めに発注、仕込み、調理を行う
✓在庫管理の不徹底
食品庫、冷蔵庫、冷凍庫内の在庫管理が不十分だと気づかず追加発注、その後期限が切れて廃棄
また規格が大きく施設の規模に対して使い切れない食材がある
✓予備食
入退院による人数変更に対応するため予備食を事前に用意。種類も疾病別や加工別で準備
提供の個別対応の煩雑化(持病による服薬と禁忌食材との組み合わせ、アレルギー対応、嗜好対応、食形態対応)
✓病院側との連係ミス
医師が入力する院内電子カルテシステムにおいて、入力ミスや入力忘れに振り回されることも多々あり、そのため廃棄する料理も多かった
食事の重要性に理解はあっても厨房内の食品ロス事情まで考慮して頂けるような病院は、私が複数見てきた中ではありませんでした。むしろその逆でサービスの一環として、いつ入院してもある程度の時間帯なら食事をいつでも出せる体制を準備していて欲しいという要望のほうが現実的でした。
そのため配膳後も厨房内に内線がかかり今から食事を用意してほしいなどの連絡が入るとすぐ用意しなければいけないため、休憩もまとまって取れず業務中は常に落ち着かないような状況でした。
ニュークックチルシステムという新調理法があります。特に大型の大学病院をはじめ採用されているところが多いですが、慢性的な人手不足の解消のために効率的な生産性を求めるため、またより安全な衛生環境のため近年で取り入れる施設が少しずつ増えてきています。すごく簡単に説明すると5日間単位で料理を計画的に作り、3℃以下まで時間内に冷却し、提供する直前に盛り付けた食器ごと再加熱カートでリヒートするという方法です。
今知り合いが入院中で料理の写真を毎食送ってもらっているとお話しましたが、そこもニュークックチルシステムを採用している某大学病院です。一般食を食べているのですが最近、治療中の副作用で食欲が無くなり珍しく食べきれなかったそうです。そのため看護師さんに食欲が無い旨を伝えたのですが、「残して構わない、どうしても食べられなかったら売店で自分の食べられそうなものを購入して下さい」とのことでした。
私が昔病院で働いていたいくつかの現場は、食欲不振で食事変更というオーダーを、配膳直前に受けることもよくありました。服薬の関係で配膳は絶対に遅らせてはいけません。時間を守れないと社会的に信用も失ってしまいます。配膳直前は時間が迫っていてバッタバタでいつも戦場でした。そんな時間帯に内線がかかってくるだけでも、その電話を取ることも難しいほどの状況です。変更オーダーを受けて「同じ時間に提供は間に合わないため個別に後程お渡しするようになります」とお伝えしてもそれでいいから変更してほしいというような要望は平日はほぼ毎日ありました。変更前の食事は無駄になり、新たに別の料理を用意することになります。そういう経験を他の病院でもよく対応していたため、その人の入院している病院の徹底力には正直驚きました。患者目線で言えば残すことに罪悪感がある人もいますし、売店で買うようにという病院も少し冷酷にも感じます。直近の食事は変更できなくても、変更が可能な時間帯からでも変えられないのか聞いてもらったのですがそれも無理のようでした。食品ロスの観点では理想的ですがニュークックチルシステムだから先の変更も受け付けてもらえないのか、双方の立場で考えると複雑な気持ちです。
規格外野菜を施設でそのまま利用するのは困難
食品ロスを病院などの施設で減らすことが難しいのであれば、せめて規格外野菜を取り入れたいという思いもあります。以前の記事でも少し触れましたが、衛生面の担保の他にも慢性的な人手不足のため少しでも労働力を減らすために、冷凍カット野菜の使用が定番化しています。例えば100床の高齢者施設では一日30~35kg程度の野菜を仕込みます。一か月間では1トン近くになります。
冷凍カット野菜のメリット
✓業者選定基準、トレーサビリティ、定期的な衛生検査
✓仕込み時間の短縮 3~5時間/日 軽減
✓提供人数の増減にも柔軟に対応できる
✓食材一括納品のため、支払いも一本化されていて便利(事務的作業、原価計算)
規格外野菜使用のデメリット
✓価格は冷凍カット野菜より高くなる(冷凍は中国産などの輸入品、大量生産大量仕入により安価)
✓生鮮品のため保存がきかない、消費期限が冷凍より短くなる
✓提供人数減の場合、納入後はそのまま仕入れロスとなる
✓献立全体の見直しが必要(原価、内容)
✓予定献立に対し、確実な納入が求められる
✓業務改善(仕込み時間が増えるため、一日のワークスケジュールを見直し)
✓業績改善(仕込み時間が増えるため、人件費や経費の見直し)
✓栄養士は献立内容の見直しのための時間を確保
献立原価、仕込み作業時間増加分の吸収のため、運営トータルでの改革が必要です。運営費増額、施設側への理解、連携等課題が山積します。そういったことを考えると規格外野菜を施設に導入することは現実的ではないと現状では思ってしまいます。
さいごに
今、個人のお宅に料理を作りに行くことがあるのですが、ご本人の希望があればですが規格外野菜をご家庭で利用して頂けるようにこちらから用意していきたいと思っています。その際には利用した重量を見える化する仕組みも作って一人ひとりの削減の目安が見えるようにし、その方が長続きもできるしどれだけ貢献出来ているか年間での指標にもなります。日本政府が発表する統計の一部に自分も参画できていると実感がわくことによって、一つの楽しみにもなってくれると嬉しいなぁと思っています。
またフードバンクの活用も並行して出来るようにしたいのですが、例えば腎臓を悪くして退院された患者さんは、退院後から減塩の食事を余儀なくされます。ご自宅にお歳暮などで頂いたお醤油など手が付けられない食品が残っている場合もありました。ご本人の希望があればそういったものを代わりに引き取ってフードバンクに持っていくサービスのイメージですが、頂き物を取っておいたけど糖尿病やカリウム制限で食べられなくなってしまった、など、でも捨てるのも気が引ける…という方がいたらやりたいなぁと思います。
給食事業では現実的ではないと諦めていたことを、ご家庭で出来るように少しずつ動けるといいです。取り組んでいけるようになったらまたこちらでご報告いたします。
最後までお付き合いくださいまして、有難うございました。