皆さまこんにちは。前回は酵素についてお話しましたので補酵素のことにも触れたいと思います。あるビタミンの働きのことを補酵素という呼び方もしますが、こちらはれっきとした食事摂取基準に掲載されている栄養素です。酵素は病院での献立作成時には考える必要がないとお話しましたが誤解のないようにお伝えしたいのはあくまでも食事摂取基準がベースにあること、酵素が全てではないということ、結局は様々な食材を摂取することが大切ということをこれからも伝え続けていきたいと思っています。
その上で先に結論をお話するのですが「乳酸発酵白菜ぬか漬け」が完全栄養食だと言いたいのではありません。他にも色んな栄養素をギュッと凝縮させたサプリやパン、補助食品など様々な商品が出ていますがそれで充分とは思ってほしくないのです。今回は以前掲載した後続記事となるのですが、現在「酵素神話」のようにダイエットや美容、免疫力アップなど一般的に広く認知されていることが気になり、ある発酵食品を食べ続けている人は酵素以外の栄養素とのチームプレーとも言える相乗効果があってこそ健康でいられる秘訣が隠されているのではないかという仮説を残したいと思い、記事にしています。
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目次
基本は食事摂取基準だけど受け止め方は様々
そのためにはまず基本からお話したいと思います。
病院で献立作成業務に携わってきたため厚生労働省の指標のもと栄養学と衛生学を忠実に、最新情報を常に反映させて業務にあたってきました。病院の場合は各種疾病ガイドラインに沿って方針をそれぞれの病院が取り決めします。その上で自問自答もあるとお伝えしましたがこの指標を否定しているわけではありません。長年研究や検証を続けていらっしゃる先生方の講演会等でのお話を伺うと本当によく努力されてコツコツと積み上げられてきている実績が反映されて指標となっていることを実感しています。この土台に、さらに「酵素」や「腸内環境」ももっと意識できると疾病の重症化予防や回復への期待もできるのではと個人でできる食事管理も考えられたら嬉しいと個人的に思っているということなのです。
ビタミン類は「国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために参照するエネルギー及び栄養素の摂取量の基準」としてなくてはならない栄養素の一部と食事摂取基準に定義されています。また食物繊維も改定のたびに数値が引き上げられていることから重要と認識されていることを感じられます。
しかし実際の病院という集団の現場ではそこまで重視されていないというのが現状でした。何故かと言うと「特別食加算」といって診療報酬の加算対象になる疾病の食種の数値管理が優先になるからです。数値が一か所でも許容範囲内から0.1gでも外れれば減算になるからです。もし酵素や食物繊維、ビタミンB群がとある食種で重要とされ加算対象になれば強化されるでしょう。しかし現時点では加算対象とは直接関係ないためよほど逸脱していなければ許容範囲内となるためそこに予算や労力をかけられていないというのが現状です。
余談にはなりますが食物繊維を目標値に近づけた献立にしたいとする方針の福祉施設もありました。その施設ではきちんと献立予算も厨房内での作業負担も一緒に考えてくれてのことでした。
「日本人の食事摂取基準」の基本的な見方
日本人の食事摂取基準は健康な人(疾病以外の人)を対象にしていることが前提です。その上で高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病は食事摂取基準で扱う生活習慣病として基本としていること、また栄養素との関連が明らかであるとともに栄養疫学的に十分な科学的根拠が存在する場合には、その他の疾患も適宜含めていること、という扱い方です。さらに脳血管疾患及び虚血性心疾患は、生活習慣病の重症化に伴って生じると考え、重症化予防の観点から扱うこととする、としています。冒頭の「総論」の「策定方針」から理解を得られれば活用の仕方がどうあるべきか、見えてきます。
日本人の食事摂取基準(2020 年版)
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この「日本人の食事摂取基準」をベースに、疾病に関しては各種疾病ガイドラインが学会から出ていて、それをもとに各病院がそれぞれ「院内約束食事箋」という指標を設けるのです。
栄養素の指標は三つの目的からなる五つの指標で構成されています。
✓摂取不足の回避を目的とする 3 種類の指標
「推定平均必要量」半数の者が必要量を満たす量
「推奨量」推定平均必要量を補助する目的 ほとんどの者が充足している量である
「目安量」十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量と推奨量が設定できない場合設定する。一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
✓過剰摂取による健康障害の回避を目的とする指標
「耐容上限量」十分な科学的根拠が得られない栄養素については設定しない。
✓生活習慣病の発症予防を目的とする指標 ※研究の数及び質はまだ十分ではない 2)。
「目標量」生活習慣病の発症予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量
食事摂取基準をベースに、自己検証
本題に入りますが酵素や発酵食品単体で考えていても考察に結び付かなかったものが、もしかしたら
「乳酸発酵」×「白菜」×「米ぬか」に何かヒントが隠されているのではないのかと考えていました。くどいようですがこのぬか漬けが完全栄養食品と言いたいのではありません。でも乳酸発酵白菜ぬか漬けのご主人のお話がたびたび登場しますが85歳で本当に若々しいのです。背筋がシャキッとしていて冬でも半袖、お肌はツヤツヤ、老眼にもならずに小さい文字が今でも読めるというのです。腕立て伏せは60回出来るとのこと(前回聞いた時より10回増えていました)。「乳酸発酵白菜ぬか漬け」について長年研究を重ね独自製法を生み出してきて今のぬか漬けにたどり着いた、お客さんのために最大限に発酵食品の良さを知ってもらいたいからと食物繊維の多い野菜で一年中安定して収穫できる白菜に決め、そして現在40年近くになるぬか床を継ぎ足しで作り続けてきた。今自分のこの健康な身体があるのは勉強して作り上げたぬか漬けの成果なのではないかと思っている。この独自製法でたどり着いたぬか漬けについて論文を書いてほしいと思うほどと仰っていたのですが私はこのご主人の生きざまと現在の健康度も込みで論文にしたためたいほどです。しかし私には論文を書き上げるような力を持ち合わせていないため、こちらで精いっぱい記録していきたいと思います。
酵素
✓消化や代謝に関わる触媒として生命活動の本質
✓酵素は年齢とともに減少していく。そのため消耗をできるだけ最小限に留めることが重要。酵素を積極的に摂取する
✓生野菜や生果物というフレッシュなものとして、また、発酵食品として摂り入れる
✓しかし食物酵素を摂取しても一部を除きそのまま消化酵素にも代謝酵素にもならない
✓原型となる酵素として量を摂り入れることは効果がある
✓人体に有害なアンモニアやアルコールを分解し解毒する作用がある
✓血液の循環が保たれれば体内に溜まった老廃物が排出されるようになり、高血圧に効果を発揮すると言われている
米ぬか
✓タンパク質や脂質をはじめ、玄米に含まれる栄養素の9割が含まれていて、食物繊維、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、ビタミンE、B1、B2、B6、ナイアシン、葉酸など身体に嬉しい成分が多いのが特徴
ぬか漬け
✓発酵過程においてビタミンB群(B1・B2・B6・B12・K・ニコチン酸・葉酸)を増やしている
✓非加熱のため酵素がたっぷり
✓乳酸菌による発酵作用がある
発酵食品(酵素)を摂り入れることで整う腸内
✓乳酸菌が腸内で酵素を作ってくれている
✓腸内細菌の種類や数とその構成は個人差がある
✓人の腸管には1000種類もの細菌が住みついている 「善玉菌」「悪玉菌」「中間菌(日和見菌)」
✓乳酸菌にはエサが必要で、そのエサとなるのは食物繊維やオリゴ糖(バナナ、豆類、ネギ類、ゴボウ、甜菜糖など)
✓腸内フローラを善玉優位の状態にすること。乳酸菌はある程度の期間は存在しても住みつくことはないため、毎日補充する
✓人間の免疫系のほとんどは腸内に集まっている
✓腸内細菌が免疫系の形成や発達を促し、また活性化にも貢献することなどが明らかになっている
腸内が整うことでもたらされる効果
✓悪玉コレステロールが低い人は腸内の乳酸菌が多く、高い人は少ないという研究結果も報告されている
(善玉菌の体を構成する物質には、体の免疫機能を高め、血清コレステロールを低下させる効果も報告されている)
✓便秘解消になり毒素が体内から排出されることによってデトックスになり、お肌ツヤツヤで美肌効果が期待できる
✓血液の酸化防止に繋がり血流が良くなって顔色もつやもよくなる
代謝の手助け、補酵素とも言われる|ビタミンB群
✓睡眠不足であったり疲れが溜まっていると、ビタミンB1が不足しているかもれない
✓ビタミンB1は体内でブドウ糖をエネルギーに変える働きがあり、疲労回復効果があるとされている
✓欠乏すると全身の倦怠感を引き起こす。また脳や心臓の症状に表れ、中枢神経や末梢神経の働きが不調になり、また心不全を引き起こすと言われている
カリウム
✓ナトリウムを体外に排泄を促す重要な役割を持っている
カルシウム
✓骨形成以外にも血圧を安定させると言われている
✓摂取する時のマグネシウムとの摂取とのバランス(2:1)も欠かせない
マグネシウム
✓不足すると血圧上昇、血糖代謝低下、動脈硬化促進、脂質代謝異常、虚血性心疾患、神経疾患、精神疾患などの要因と関係している
食物繊維
✓米ぬかの食物繊維の主成分は不溶性であり、水分を吸収して何倍にも膨れ、腸壁を刺激して便通改善の効果が期待できる
✓大腸がん発生率の抑制効果、有害物質の排出に注目されている
✓善玉菌のエサとしての役割もある
✓食物繊維には血糖値の急上昇抑制、コレステロール低下の効果が期待できる
補酵素の重要性
栄養素は国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために参照するエネルギー及び栄養素の摂取量の基準として「エネルギーのもととなるもの」「筋肉や血のもととなるもの」「からだの調子を整えるもの」に大きく分けられます。このうち「からだの調子を整えるもの」がビタミンやミネラルに当たり、炭水化物やタンパク質の代謝を助ける働きをする、なくてはならない重要なものです。だから指標に載っているのです。
白菜のぬか漬けには「酵素」「善玉菌」「食物繊維」「ビタミン」「ミネラル」などが含まれています。
「白菜」「米ぬか」「発酵食品」このバランスが85歳のご主人を健康的に支えているのかなと思っています。さらにこちらのご主人はヨーグルトも毎日食べていると言っていました。植物性乳酸菌だけでなく動物性乳酸菌も同時に摂取することが良いことなのかとご自分でいろいろな本を読んで独学で勉強し実践しているそうです。
酵素だけでなく「補酵素」であるビタミンB群も同時に摂れていることが、このぬか漬けを食べ始めて半年になる方も、お酒を飲んだ次の日も調子がいいのではないかと思いました。そしてそれだけではなく他のミネラル類なども一緒にに摂取できています。そういった相乗効果や拮抗作用が働いている、それを続けているから効果が見え始めている、そう思うのです。
さいごに|「食事のバランスが大事」はチームプレー
お二人とも普段の食事で他のものも食べているので「白菜のぬか漬け」がいい!と結論をつけたいのではありません。結局どれがいいの?ということではなく、酵素サプリを摂ることもヨーグルトやヤクルトもきっと身体に良い作用をもたらしてくれると思います。
でもやっぱり原点である食事摂取基準に沿った栄養素をバランスよく意識して摂取すること、その上でビタミンやミネラルという不足しがちな栄養素もしっかりと意識することが大切ではと再認識させてくれます。もしも酵素サプリや食物繊維のサプリなどを長い間摂り続けているのに改善したいような変化が見られないという場合は、このように他の普段の食生活での組み合わせも見直してみてはいかがでしょうか。食事はよく「バランスが大事」と言われますが様々な栄養素が体の中で繋がって効果を発揮しているということを知って、チームプレーで活躍してもらうイメージを持ってもらえると嬉しいです。そして何よりも継続は力なり。私は食べ始めてまだ2か月ですが私も漬物屋のご主人のように作用をよく勉強して食べ続けて、自分の身体の変化や効果を実感できるようになりたいと思います。