皆さまこんにちは。本日は完全にただのブログです。最近個人のお宅に料理を作りに行く機会があり、そこで昔のことを思い出したことがあったので独り言を記事にしました。
初めましての方に料理を作るというのは、飲食店とも給食とも違ってその方の嗜好に合わせることが一番大切だと思います。それでも最初のうちは万人受けする一般的な味付けで料理をすれば、余程のことでない限りまずくて食べられないまではないかなと思って作りました。やり取りを重ねてより好きなものに近づいていけるといいなと。しかし初日に作った5品の中で私が個人的に一番美味しくできたと思った料理が翌週行ったときに冷蔵庫に残っていて一番おいしくなかったと言われました。茄子を使った煮物にしようと思い、お宅にあった車麩を使って作ったのですが車麩が嫌いと言われたのです。車麩だけが理由だったかもしれません。それでも茄子も残っていたので食べてもらえなければ意味がありません。他は美味しかったよ、でも、あと銀鮭の塩焼きは嫌だ、とのことで次回以降の今後のメニューに活かすことにしました。写真はその時の5品です。
・牛肉と牛蒡のしぐれ煮
・銀鮭の塩焼き
・茄子と車麩の含め煮
・春雨と胡瓜の酢の物
・ほうれん草の胡麻和え
買い物に行く前に、好きな食材、苦手な食材、薬との組み合わせの禁忌食材や病歴で制限しているもの、アレルギーの有無、調理法など尋ねたのですが制限は何もない。好きなものと嫌いなものはあるようでいくつか教えて頂きました。そんな会話を終え時間を確認しようと壁の時計を見たらその横に糖尿病単位交換表のポスターが貼ってありました。それなら野菜をしっかりと摂れる料理にし、芋類は少量に、全体的にバランスが摂れるようにと自分の中で決めました。その上で嗜好に合わせた料理に近づけていこうと思い、翌週の2回目も訪問しました。
2回目は写真を取り忘れてしまったのですがメイン2品ともお口に合わず。。副菜は美味しかったと言ってもらえましたが料理の好みというのは本当に難しいと久しぶりに感じました。今後週1回このお宅にお伺いすることになるのですが、この様子だと5品中1品だけでも美味しかったと言ってもらえれば充分なのかもしれない…まだ2回目のやり取りとはいえそんな思いがよぎりましたが、また次こそはと、昔と違ってすぐに前向きに思い直せました。
本日のタイトルが「野球と料理の共通点」ですが、私が昔仕事で献立作成業務をしていた時に随分落ち込み、辛かったことがあったのですが、野球番組を見て気づかされたことがあり救われたことがあったのです。それを今回のお客さんのところに行って思い出しました。だから自然とそう思えたんだと思います。
今シーズンのプロ野球は、昨シーズン最下位同士のチームがそれぞれリーグ優勝して日本シリーズで戦いました。贔屓球団ではなかったですがこの時期まで野球が楽しめたこと、全力で短期決戦でぶつかっているシーンを見てこの時期までワクワクできるというのは本当に嬉しいです。しかも今回は接戦ばかりの展開。私は野球を観るのが大好きです。私は素人ですが私にとって野球は夢と希望と勇気と元気がもらえる、なくてはならない存在です。野球が無いとヒマになります(笑)
一昨年の2019年に、あの王貞治さんが言っていた一言があります。「野球はみんなが監督になれる」。そのフレーズが何となく心に残っていました。
現場での献立作成が進まない事が時にあります。栄養士は養成学校で献立作成を習得できるほど勉強する機会はありません。栄養価計算ソフトを用いて実践する授業は勿論ありますが実務レベルで出来ないのが現状です。しかも就職先で現場でマンツーマンで教えてもらうことも私が勤務していた会社ではありませんでした。栄養士はインターンのような制度もなく就職したら即戦力扱いです。
一食、一日、一週間、一か月間のくくりでメニュー構成のバランスを見るのですが、食材と食材の切り方、彩り、調理法、味付けを偏ることなくまんべんなく出すことが求められます。それには料理の知識に加えて集団調理の知識(家庭料理との違い)、作業時間や衛生面、設備機器、人員を考慮した献立作成が必要になります。その感覚は現場で仕込みから調理、盛付、配膳、洗浄までの一通りを行うことで経験値が積めると思っています。私は幸運にも現場から入れたため最低限この一通りの業務は3年間できました。その後病院にて、3年じゃ足りなかったと感じながらも献立作成に取り掛かっていました。病院の場合さらに治療食へ展開する知識も必要です。現場経験も無くいきなり献立作成や発注というのは基本動作が身に付けられないのと同じです。結果、言葉で説明や個別指導しても伝わらないのが現状でした。
様々な理由で現場のフォローに行きましたが現場栄養士の献立作成が煮詰まった時もよく行きました。でも原因を聞くと施設側からメニュー表を見て要望を受けるのです。その指摘部分を修正すると今度は別の箇所とかぶりや続きが発生してしまう。組み合わせで献立が成り立っているためそれを崩すとおかしなことになり納期が遅れるのです。
ある日現場の栄養士が休職するため代わりに献立作成の作業に行ってほしいと依頼がありました。取り急ぎ、納期が遅れているため急いで提出して欲しいとのことで休職予定の栄養士が立てていた一週間分の献立明細表を確認の上、提出しました。ところが開口一番「何これ!ちゃんと見てるの!?」と施設の方に怒られました。何のことか分からず尋ねたところ、グリンピースが冷凍でなく生で入っていると。選定ミスで入力間違いしてしまっていたようです。もちろん提出物は正確に入力しないといけません。信用問題にも関わります。ただこの一点だけで言えば栄養価にも発注にも問題ない内容でした。指摘を受けるほどのことではなく施設側には影響の無いことです。初対面の人にここまで怒る?という挨拶代わりから始まりそこから指摘の嵐、修正に修正を重ねて訳がわからなくなり食材のネタも尽き、新種の野菜でも入れない限り永遠に終わらないやり取りが続きました。今となればあり得ないと笑えるほど時も経ちましたが、そんなレアな指摘をせっかくなのでいくつかご紹介します。
✓昼の主菜の付け合わせがブロッコリーなのに、翌日昼の小鉢にカリフラワーが入ってる、続いてる
✓夜にほうれん草が使われているのに翌朝小松菜が続いてる
✓夜にじゃが芋、翌朝ごぼう、続いてる
✓朝がんもの煮物で、2日後の朝はつみれが使われてる。続いてる …etc
えーーー!?でした😓いつも同じようなものばかり。食べる人の気持ちになって献立を立ててる?と。どこが続いているのでしょうか?と困って私も聞き返したら、「見た目が全部似てるじゃない!聞かないと分からないの!?」とのこと…
このようなやり取りが延々に続きますが当時はその要望に応えないといけないと思い一週間分の献立を何度も修正していました。でもなかなか完成出来ずせめて終電までは頑張ろうと残って仕事してると「いつまでここにいるつもり?ここは宿泊所じゃないのよ」と。私だって帰りたいんですけど…とりあえずこの日は帰り担当マネージャーに報告し、でも終わらないからだんだんと最寄りのビジネスホテルに泊まることになりました。上記の他にもいんげん、絹さや、スナップエンドウが続いたら指摘を受け、いんげんとアスパラが続いても指摘を受け、キャベツと白菜が続いても指摘を受けました。そんな内容を夜中3時まで紙上でチェックし修正箇所を書き込み翌朝現地に行って内容を打ち直して栄養価のチェック。この時点で原価は無視…本来は一ヶ月分で提出するのですが納期に間に合わないためこんな様子で一週間分ずつの献立を毎回提出していました。
私は今までその要望に応えられない自分の技量の無さが悪いと思っていました。でも、数年後にそうじゃないと気づかせてくれたテレビ番組があります。BSNHKでシーズンオフに放送される「球辞苑」という野球の番組でした。ある日仲の良い友人が教えてくれたのです。この番組、コアで超おもしろいよ~と。その教えてくれた回は「クイックモーション」がテーマの内容でした。捕手からセカンドベースまで投げるタイムと、投手の投球動作と一塁走者のリードと走りとそのタイム。セーフになったらキャッチャーが必ずカメラに抜かれるけどキャッチャーは悪くない、悪いのはモーションの遅いピッチャーだから。論破してるその理由が的確で面白くて見入ってしまい、それ以来毎週欠かさず録画しダビングし、ヒマな時はその番組を何度も観ます。ストーブシーズンを楽しませてくれる、テレビ番組の中で一番大好きな番組になりました。
毎回一つだけのテーマを深堀りして一時間取り上げるのですが、そのうち野球には正解が無いことに気づいたのです。ルール的な正解やセオリーと言われるシーンによっての動作や作戦はあるものの、例えばカーブを投げる時のボールの握り方とか、フライを取る時の位置取りとか、選手の個々の技術や経験値の違い、相手選手やその時のイニング、リード状況、カウント、それぞれの場面で状況に応じて対応していることを知りました。私は野球は全くの素人なのでただゲームの行方を見て一喜一憂しているだけでしたが、正解は無くて当然、なんてこんなにも奥が深いんだ…と目からうろこの発見ばかりでした。
ここで王貞治さんの言葉に戻るのですが、 野球はみんなが監督になれるというのはあえて違う言い方をするならば、色々言う人もたくさんいる、と私なりに解釈しました。そうか、野球って料理と同じくらい身近なもので料理と同じくらい色んな意見が飛び交うんだ。第三者があれやこれや言うのは野球も料理も同じなんだ、と。だからそのフレーズが引っかかっていたんだと今さら気づきました。
監督も大変ですよね。。何であの場面で投手を交代させなかったんだ、何で走らせたんだ、何で代打を送らなかったんだ、などなど結果論でならいくらでも言えます。色んな声が耳に入ってくることがあっても自分がブレてはいけない。また選手もブレないで貫き通すためにも技術をもっと磨くこと、仮に結果が出なくても何で失敗したのかを検証し次に活かすこと。
野球をかつてやっていた人、元プロ野球選手、コーチも変われば指導内容は180度変わることもある。言われる方は惑わされてしまうかもしれませんが何を聞き入れ取り入れるか、自分がどう成長させていくかは自分が何を信じるか。基本動作を徹底的に身につけた上で具体的な目標を持つことが成長への近道になる。とにかく色んな意見が入ってくるけど軸を持つこと。
料理の話ですが、確かに献立作成では指摘を受けてごもっともという内容も時にはあります。レシピ入力が正確でないと調理師やパートさんから信用されません。また先ほどもお話したように栄養士は調味料や料理の基礎中の基礎さえ知らない人も実際に多くいます。片栗粉でのとろみの付け方を知らない新卒もいました。でも一週間のメニューをみてこっちの味付けとこっちの料理を入れ替えてくれだの組み合わせが悪いだの、まわりに言われても全て聞き入れる必要はないんだと気づきました。ましてや食材が違うのに、見た目だけで「いつも同じものを食べているような気になってしまう」というのはその人の主観であり、そこまで要求するならもう自分で献立を立てて下さい、とあの時言えば良かったのです。その線引きはしっかりとブレずにいるべきだったと今は思います。
料理も、みんなが監督になれてしまうんです。野球も料理もみんなにとって身近なもので誰でも主義主張ができ口を挟みたくなる。若手や経験不足ではそれに対する自分のデータも根拠も示せず言われた通りに変えるしかない。でも変えすぎて軸がなくなり結果余計にぐちゃぐちゃになる。そんな悪循環で「自分の技術が足りないからだ」と落ち込んでいたのですが退職する直前に気づきました。球辞苑を観て野球って一人ひとりのやり方に正解も不正解もない。それに対してまわりが色々意見してくるけどそれだってその人個人の考えなんだ、いちいち気にすることはないんだ、と。そして王貞治さんのあの一言が私にとっての決め手になり、料理も基本的なことはまず最低限しっかりと身につけ、その上に技術、それを自分の自信に変えられれば「これで問題ありませんよ」と言えたかもしれない。
一人の人と向き合った時に、結果論として美味しくなかったと言われてももう自分が悪いとは思わなくなっていました。誤解のないようにお伝えすると、相手の嗜好を無視して料理本やアプリのレシピ通りに作っているんだからこれでいいんだ、ということではありません。否定されてもいちいちそこに傷ついて落ち込む必要はないと思えた、ということです。それでもいつかは5品全部美味しかったよと言ってもらえるように、正解を一緒に作り上げていくものだと学びました。それでもいつかは「もう来なくていいよ」と言われてしまう日がくるかもしれませんが、それまでは寄り添っていけたらと思います。
久しぶりに昔のことを思い出した最近の私の出来事です。料理という誰もが監督になれて誰もが口を出せる、人間にとって食事は生きるために必要不可欠なもので、日常で、何でこんな身近な分野を職業にしてしまったんだろうとずっと後悔していたのですが、野球にもそれぞれ流儀があるように料理も流儀でいい、あとはどれだけファンが楽しめるか、どれだけ食べた人が美味しかったって思ってもらえるか、それでいいんだと思えたら気が楽になりました。
最後にこちらは3回目の料理の写真、感想は来週です。機会がありましたらご紹介できたらと思います。
・銀鱈の煮付け
・チキンクリームシチュー(写真なし)
・レンコンの金平
・春菊のお浸し
・ズッキーニのピクルス