皆さまこんにちは。本日はお通じの悩みについてお話したいと思います。
快便は、快食、快眠と合わせて健康的な生活を支える三原則と位置付けられています。近年では“腸活”や“菌活”といったワードが定着し健康でいられるための正しい知識を身に付け、日頃から実践をしている方が多くいらっしゃると思います。腸内フローラを善玉菌優位にさせることで免疫力が高まり感染症防止、ストレス軽減、便通を良くすることでデトックス効果を期待し内側からきれいになることを目指します。そのために身体に有益な微生物菌を積極的に摂取し、また彼らのエサとなる食物繊維やオリゴ糖を意識して摂取を心がけます。
”腸脳相関”という言葉を聞いたことがありますでしょうか。
脳の表面にはおよそ150億の神経細胞があります。一方、腸の神経細胞の数はおよそ1億で”腸神経系”と呼ばれる独自の神経系を持っています。この数は体の臓器の中で脳に次ぐ2番目の多さだと言われています。さらに腸は脳と約2000本の神経線維でつながっていて緊密に連携しています。指令を受け取るだけではないんですね。そして腸内に棲みついている微生物は体内物質(ドーパミンやセロトニンなど)を半数以上生成していると言われています。
普段健康でいられていると感じている人でもお通じにはあまり意識がない、という方も中にはいるようです。意外と軽んじられているケースもあるのですが放置しておくと何事もいいことはあまりありません。
健康な人でも病気を抱えている人でもお通じが満足いくものであることは理想的なことだと思います。改善に繋がる何かきっかけがないか最近ずっとそんなことを考えていました。改善の手がかりになるようなことや最近私が実践していることを少しでもお話できたらと思っております。
目次
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腸内フローラとは
”腸内フローラ”とは正式には”腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)”と呼ぶのですが顕微鏡で腸の中を覗くと菌種ごとの塊となって腸の壁に隙間なくびっしりと張り付いています。この状態は品種ごとに並んで咲くお花畑(flora)にみえることからこのように表現されています。
私たちの腸内には多種多様な細菌が棲みついていていて、その数なんと約1,000種、100兆個。特に小腸から大腸にかけて生息しており、これらの様々な細菌がバランスをとりながら腸内環境を良い状態にしています。腸内環境が良いか悪いかというのは、人間にとって有益な菌が多く棲みついているかそれとも悪い菌が多いか、というバランスの問題のことを指しています。
腸内フローラは3歳までに原型が確立すると言われていすが有益な細菌を毎日摂取し続けることで善玉菌を増やすことが出来るため、努力次第で腸内フローラを変えることができるのです。
腸内フローラには善玉菌と悪玉菌のほかに”日和見菌”というどちらでもない菌がいます。その割合の理想は
<善玉菌2・悪玉菌1・日和見菌7>となるのですが、この日和見菌を善玉菌と同じ発酵活動をさせるには乳酸菌やビフィズス菌などの人間に有益な菌を積極的に摂取することです。一方、悪玉菌が増えるというのはその逆で、日和見菌を腐敗活動に参加させてしまうことです。日頃の食事内容や運動、生活習慣などで腸内フローラに変化が起こります。
そして善玉菌は加齢とともに減少していきます。
※微生物菌、細菌、善玉菌、悪玉菌などと色々な言葉が出てきますが基本は同じと思って頂いて構いません。菌が私たち人間にとって有益かどうかで善悪使い分けているだけです。悪玉菌の場合、他にも腐敗菌、病原菌、食中毒菌などとも言います。
私は前職での働き方が異常で生活習慣が乱れていました。深夜まで働き朝は起きられずそのため朝食がまともに摂れず、夜は仕事をしながらおにぎりやサンドイッチ、または終電近くで駅前の蕎麦を食べて帰るか食べずに寝るか。昼は外食。家で料理をすることがほとんどなくゴミ捨ては一か月に1回で充分な生活でした。これだけ不規則だったためストレスも疲労も慢性的で、また便通も良くなく毎日出ることはありませんでした。この状況から抜け出したく、ある時からヤクルトを飲み続けるようにしました。その後会社を退職して人間らしい生活を送れるように生活環境を変えました。お陰様で転職してからは毎日お弁当を作り規則的な生活を送ることでストレスも疲労も軽減され、また便通も改善され、会社を辞めてよかったとしみじみ感じています。今は乳酸菌と発酵漬物について勉強しているところです。昨年12月に「食べるぬか」を購入し、その日以降毎日ティースプーン1杯分食べ続けています。
腸活や菌活の目的は単に便通を改善させたいだけでなく、免疫力をアップさせたい、ストレスに打ち勝ちたい、がん予防、疾病予防、痩せたい、美肌・美容のためになど理由は人それぞれです。いずれにしても排泄が身体にとって良いことは言うまでもありません。人が住む街は下水処理、ゴミ処理機能がなくてはなりません。衛生的な空間を保つために最も重要なシステムだと思っています。安心して暮らしていられるのはこれらの機能が正常に運営されているからです。人間の身体も同じ。排泄が正常だから健康的な身体でいられる。便秘が慢性的になると様々な疾病を引き起こしてしまうかもしれません。
慢性便秘症診療ガイドライン2017
2017年に日本で初めて便秘症についてガイドラインが出来ました。
便秘の定義と診断基準
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-010.html
慢性便秘症診療ガイドライン2017では、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。また、便秘症とは「便秘による症状が現れ、検査や治療を必要とする状態」であり、便秘症の診断基準は下記のように定められています(表1)。
鶏が先か、卵が先か
便秘症が腎疾患を引き起こすのか、腎疾患で便秘症になるのか。よく鶏が先か、卵が先かなど言われますがこのフレーズを思い出しました。慢性便秘症により体内に毒素が溜まっていけば少しずつ腎臓に負担がかかってしまってもおかしくありません。そしてタバコやお酒、ストレス、その他日頃の食事内容や生活習慣などにより腎臓機能が低下してしまうということはそれが原因の全てではなくとも理由の一つとして充分考えられます。
このような記事を見かけました。消化器科のお医者様が当時論文を分かり易く簡単にご紹介して下さっており私も深く同感する興味のある内容です。また大手製薬会社のホームページにもアメリカの研究報告をご紹介しておりどちらの記事を読んでも人間の身体はすべてが複雑に繋がっていると感じます。タマゴが先でもニワトリが先でも、いずれにしても影響しているのだと思いました。
便秘で腎疾患発症?
https://mbp-japan.com/fukushima/hirozoo60248/column/702916/
便秘症患者はそうでない人に比べて、慢性腎臓病を発症する可能性が13%高く、腎不全になる可能性が9%高かった。便秘症が重症の患者ほどリスクも高かった。
腸と腎臓との間に妥当な関連性があることを示し、腎疾患のリスク因子について新たな洞察をもたらす。
便秘はこんなリスクを高める・・・
https://brand.taisho.co.jp/colac/benpi/shoujou/
アメリカ・メイヨー医科大学の研究報告によれば、便秘のある人はない人に比べて15年後の生存率が低いという結果がでました。( Chang JY, et al Am J gastroenterol 2010 メイヨー医科大学の15年間の追跡調査)便秘は生活の質(QOL)を下げるだけでなく、寿命も縮めてしまうことが明らかになってきました。便秘による腹痛や腹部膨満感などが食欲低下をまねき、栄養状態が悪化してさまざまな機能が落ち、心筋梗塞や脳卒中、寝たきりなどのリスクが高まると考えられています。
腎疾患の方が便秘に苦しんでいる
以前の記事で、腎疾患で在宅療養されている方について記載しました。
酒は飲んでも飲まれるな|三者三様の飲み方で何かがわかるかも? – ピューレの森 (puree-nomori.com)
現在は在宅にて療養中ですが、とにかく便秘が辛そうです。退院直後は下剤も服用されていて苦しそうでしたし出来れば下剤ではなく自然にお通じが出ることが望ましいです。しかし病院では便秘症のために配慮した献立を作成するということはありませんでした。腎疾患に限らずどの疾患でも薬の副作用により便秘になりやすいというのは聞いていました。薬のことは詳しくないですが、糖尿病や精神疾患、様々な治療薬で聞いたことがあります。
腎機能が低下するとカリウムの排泄減少による高カリウム血症が予測されるためカリウム制限が行われます。カリウムは野菜をはじめ芋類、海藻、果物など食物繊維を含むものに多く、摂取が制限されます。基本的には野菜が一日350gになるように献立作成をします。しかし腎疾患の場合は200g程度でした。カリウム制限すなわち食物繊維制限となり、これが便秘の原因となることも考えられます。
給食は外部委託が現在主流となっており、私は病院で働いていても患者さんと関わることがほとんどありませんでした。薬の副作用(それ以外の理由でも)で便秘に苦しむ患者さんがいることに気づけませんでした。そして今、目の前で苦しんでいる方がいます。しかしカリウム制限のために野菜や生果物はなるべく控えなければいけません。腎疾患でカリウム制限すなわち野菜制限は果たして正解なのか、その患者さんに会ってからずっと考え続けてきました。
写真は年始の7日に買ってきた春の七草です。年末年始ほとんど食べていない様子で体調もいつにも増して悪そうに見えたため、カリウム制限以前に何か食べて欲しくてこの時ばかりは思わず強制的に買ってきてしまいました。縁起を担ぎたかったという思いもあり、7種類を並べてどれがハコベラでどれがゴギョウか一緒に確認しながらちょっとでも食べてくださいね、とお話しました。私が帰ってからご自分で七草粥にして一口くらいは食べてくれたようです。
腸内の悪玉菌が増える理由
一般的には腸内フローラの原型は3歳までに作られると言われ一生変わらないとされています。3歳くらいの時の腸内フローラが最も良い状態で、加齢により善玉菌が減り悪玉菌が増えていきます。腸内フローラのバランスや内容は個人差があるのですが、食習慣や生活習慣などにより変化していきます。
悪玉菌は脂質や動物性タンパク質から有害な物質をつくると言われていて、悪玉菌が増えるとアンモニアやアミン、硫化水素といった有害な物質や発がん性の物質が増加し、血流にのって全身に運ばれるといわれています。逆に尿毒素が溜まると腸内の悪玉菌が増えるとも言われています。
悪玉菌が増える原因には、肉や脂の多い食生活、喫煙、飲酒、便秘やストレスといったさまざまな生活習慣の関与が考えられていて、悪玉菌の割合が高くなって腸内環境が悪化すると肌荒れや口内炎、下痢や便秘といった症状を引き起こします。また、がん、糖尿病、うつ病、アレルギーなどのさまざまな病気に関連しているともいわれています。
先ほどの話に戻りますが腎疾患の患者さんは一定の食材が制限されます。すなわち食物繊維の摂取量が減りますので便秘症に拍車をかけてしまいます。毒素が排出出来ない身体でも腸内環境を整えて便通を改善させるしかないと思います。そのためには善玉菌を増やすことです。野菜や芋類以外で食物繊維を摂取するしかこの方の場合ですが今は他に思いつきません。また「菌のチカラ」を頼るしかありません。
今一番困っていることはなに?と聞いてみたところ
毎月後半に1回、外来で経過を診てもらっています。12月の外来時は数値がよくなっていてお医者さんから褒められたそうですが1月はまた元の数値に戻ってしまいました。確かに12月外来後の年末年始以降、薬はほぼ飲まず一日一食しか食べられない食事も出前やインスタント食品の日が多くありました。しかし足腰が悪く室内も歩くのがやっとの状態でお腹がすかないから食欲がない。カリウム制限以前の問題が続いていました。
私は管理栄養士として在宅訪問しているわけではありませんが心の中ではいつも葛藤していました。御本人もきっとあれダメこれダメと言われても窮屈かと思いあまり食事の内容について話すことはあまりしませんでした。とにかく少しでも食べて欲しい、それだけは時々声をかけてきた程度です。出前でもインスタント食品でも何かしら頑張って食べていることはその方なりの努力だということも感じていたからです。気軽に摂取しやすい牛乳やジュースを飲みながら、食べられそうなときは自分でも1品作って食べるという様子がここ2~3か月ほど続いていたのです。
しかし1月、血液検査の結果がまた悪くなっていたこともあり、一番気にしていることは何かそれとなく尋ねてみました。そうしたところ、やっぱり一番は便秘が辛いということでした。実際にこれまでも時々イージーファイバーを青汁に混ぜて飲んでいて、また以前外出同行した際にも、薬局に寄って食物繊維の菊芋イヌリンのサプリメントを購入していました。
またよく買い物でカルピス、甘酒を頼まれることもあり、またある人からマグネシウム含量の多いミネラル水が便秘にいいのではないかと勧められたそうで買い物リストに追加されました。その方なりに何とかしたいという気持ちは感じていました。
※念のために補足ですが、青汁が腎疾患に禁忌ということは分かっていましたが食事が摂れていないためそれを一包摂取したところでカリウム値がオーバーすることはこの方の場合ありませんでした。
2月の目標|善玉菌を増やそう
とにかく善玉菌を増やしてみることを2月の目標にしました。そのためには発酵食品を摂取すること。毎日摂り続けないと乳酸菌は住み着いてくれない、補充がないとまた元の腸内環境に戻ってしまうとお伝えしました。そして同時に乳酸菌のエサとして食物繊維やオリゴ糖を摂ることをおすすめました。きっと一度に色々言われてもやる気をなくしてしまうので、まず1週間は続けようと伝えました。以前から甘酒が好きなようで酒屋さんに米麹の甘酒の買い物を頼まれていたのですが、今回は広告を見てさらに酒粕も依頼されました。カルピスも追加依頼を受け、私は個人的にヤクルトをお勧めし、ご本人の嗜好や続けられそうなものを一緒に探すことから始めることにしました。
ただただ一日三食食べろ、野菜は控えろ、塩分控えろ、バランス良く食べろ、なんて、食事を苦にしている人からしたら余計に苦しいだけです。無力だなぁと実感します。今は発酵食品を続けることで来月に変化が現れると嬉しいです。
次回は甘酒についてご紹介したいと思います。別件で乳酸発酵と腸活についても記事にしていますが乳酸菌の作用と麹菌の作用それぞれ勉強していてとても面白いです。
いつも最後まで読んで下さいまして、有難うございました。